■ きぬがさ給水塔
 (富士見 配水タンク)
神奈川県 横須賀市 佐野
最寄 京急バス『佐野4丁目』
撮影 2007 / 12/18



 『きぬがさ給水塔』

 正式名称は分かりませんが、「コアジロ買い出し紀行」(coconeさん運営)で そのように仮命名された、この不思議な形状の給水塔は…

 京急『横須賀中央』から 衣笠 に向かう 県道26号 の途中、バス停『曹源寺』あたりで、東の丘の上に ちょっとだけ姿を見せる建物です。


 いや、バスの中からだと、本当に見えるのは一瞬なんですが。
 しかも、家と家の隙間から(笑)


 場所が判明してから、作中のアルファさんのような視点で給水塔を見たくて、わざわざバス停 『衣笠十字路』まで行って、そこからUターンして来たのですが… 

 肝心の給水塔が、付近の建物が壁になってまったく見えなかったほどです(泣)


 「コアジロ買い出し紀行」で その存在を知ったものの、所在が明記されておらず、当初は正確な位置が分からず困っていたのですが…

 件のサイトには、「衣笠山公園から見下ろしました」と書かれているので、自分もそこに行って場所を確認するしかないかな…? と、ちょっと弱気になっていたのですが、フト思いついて、「横須賀 + 給水塔」あたりの言葉でネット検索して探し歩いてみたところ…

 なんと、この給水塔を話題にしている地元の方々の掲示板(2ch?)に辿り着き、しかもそこには Google Earth による現地の上空写真へのリンクが!

 これと、手持ちのゼンリン地図を見比べる事で、ようやく判明しました、『きぬがさ給水塔』の所在地。

 分かってみれば、バス停『曹源寺』 から「たった300メートル」の地点でした。


 が、それは直線コースの話…

 この給水塔は、県道26号から少し離れると急に50メートルほどの丘となっている町の中に建てられているのです。

 しかも、付近の小道が異様に曲がりくねってアップダウンする「三浦半島」然とした町なので、1本道を間違うだけでどこへ連れて行かれることやら…


 というわけで、この給水塔を目指す道中を死屍累々にしないためにも(なりません)最短アクセスコースを以下に紹介いたします。


 分かってしまえば、バス停から たった800メートルの道のりですが、これを見つけるために2時間ほど佐野3丁目〜5丁目を歩き回った先人(私め)の苦労に わずかでも思いを馳せていただければ、これに勝る喜びはありません。






 まずは、バス停 『佐野4丁目』で下車します。

 京急『横須賀中央』からなら、「衣笠十字路」方面に向かうバスに乗りましょう。

 本数は頻繁に出ており、現地自体も比較的近いので、「衣笠」「長井」「横須賀市民病院」行きなどが、全て「佐野4丁目」を通ります。


 バス停のすぐのほうに見えている信号機を左折して、小さな道に入ります。
前方の民家に 『福田ふとん店』 の小さな看板が見えていれば正解です。








 100メートルほどで、広めの「遊歩道」に出ます。

 ここを右折して100メートル行くと、『三洋台入口』という青い道標が。

 この「三洋台」が、給水塔のある丘の名前のようです。 当然、左折して小道に入ります。


 やや曲がりつつも基本的にまっすぐな道を、300メートル進みます。
 ちょっと坂になっています。








 十字路っぽい場所に出たら、右にUの字を書くように曲がって、右側にのびている坂道を登ります。

 この辺りからしばらく、グッと勾配がキツくなるので、ちょっと覚悟してください。


 200メートルほど登ると、ようやく丘の最上部に到着。 ここで左折します。












 100メートル進んで、道がナナメに曲がった辺りでをご覧下さい。

 ほぉらビックリ。

 唐突に『きぬがさ給水塔』と ご対面です。



 近づいたり離れたりしつつ、自分好みのアングルで楽しんでみて下さいね。



 あと もちろん、ここは眺めるだけです。

 給水塔敷地の柵の中に入っては いけませんよ?








 この給水塔、衣笠の町並が やや窮屈なこともあってか、思いきり離れるか、思いきり近づかないと目視できない不思議な存在です。


 それでも、地元の皆さんは さすがです。

お話を聞いてみると、「子供の頃から、何の建物か分からず不思議に思っていた」、「家の近くから いつも眺めています」 など、生活の中に溶けこんだ「当たり前の風景」として、この給水塔をご存知なのです。

 知らぬはビジターばかりなり… という感じでしょうか(苦笑)


 ちなみに、給水塔への道に慣れたら、ぜひ付近の道へも立ち寄ってみてください。
 丘と共に生きる人々の建築からは、平地に住んでいる者にとって驚くべき工夫の数々が見てとれて、飽きません。


 注意点は、このあたりのお住いは、公道と私道の区別がつきにくい(どちらも同じぐらい道幅が狭い)という事…

 僕も、公道だとばかり思って入ってみたところ、気づけば他人の家の庭先にいて、大慌てでUターンしたことが数回ありました(苦笑)

 地元の方に、「なんて失礼な旅行者だろう…」と 誤解されないためにも、皆さんも訪れた際は、ちょっと注意しつつ歩いてみてくださいね。






 2014年8月

 横須賀にお住いのヨコハマファンである 利根運河さん から、ある残念な事実が報告されました。

 「きぬがさ給水塔」が解体されることとなり、すでに その工事が開始されてしまっている というのです。


 (おそらく)古くて、今後 倒壊の恐れもある建造物をそのままにしておくのは危険なので、行政のほうが気を利かせて解体工事に入ったのだとは思いますが、

 われわれヨコハマファンや、この給水塔のある景色に慣れ親しんだ地元の方々にとっては、いろいろと思うところもあるのではないでしょうか…?



 ヨコハマ名所の1つである『きぬがさ給水塔』は、やがて、写真と、われわれの記憶の中だけに残る建造物になってしまいます。

 が、誰かが憶えているかぎり、その光景は永遠です

 給水塔が無くなることが決定した今、僕のサイトが その光景を写真に残したサイトの1つ となれることを、誇りに思わずにおれないのです。




 こちらは、2014年8月下旬に、利根運河さん から ご提供いただいた、解体途中の「きぬがさ給水塔」です。





 「ちょっと 土星の輪っかのようでコスモ感というか不思議な感じですね」とは、利根運河さんの お言葉です。

 慣れ親しんだ風景に、異物が貼りついている光景は、違和感寂しさ を呼び起こさずにはおれないのではないでしょうか?


 そういえば、自分も これとよく似た感覚を、以前にどこかで感じたことがあったような… と思い、記憶を辿ってみたところ、

 思い出しました。


 2003年ごろに、東京タワーの最上部付近に、地デジのための「円盤状のアンテナ」が 増設された、あのときの感覚です。

 あのスマートな塔の外観がどこかヤボったくなってしまい、「今まで見慣れていた東京タワーとは、二度と会えなくなってしまったんだな…」といった、なんともいえない寂しさが湧いたのを憶えています。



 もちろん、「きぬがさ給水塔」 と違って、東京タワーは無くなったわけではないのですが、人の思い出って、『まったく同じ風景』でないと再生されない ところがあると思うのです。

 それが地上から無くなるということは、自分の中の 「かつての自分の心が再生される場所」が、1つ、永遠に失われるのと同義


 そこには、家族や友人の死と同格の 重み があると思うのです…




 2014年9月中旬利根運河さん からの情報により、この給水塔(?)の 正式名称が判明いたしました。

 その名も、『 富士見 配水タンク 』

 解体工事の内容を示す看板に正式名称が書かれていたおかげで判明した… というあたりが、なんとも切なくもありますが…



 ただ、正式名称が分かったおかげで、この名前で検索することにより、いろいろと この建物の経歴が分かってきました。

 昭和41年(1966年)に 完成し、
 昭和58年(1983年)に 使用廃止になった
こととか…(え!たった17年?)

 ■『横須賀市 上下水道局』
  (歴史写真館 水道編 配水池)


 使用されなくなってからも、実に30年以上、「知る人ぞ知る ランドマーク」として生き続けていたのですね…












 『きぬがさ給水塔』が無くなって 6年半

 2021年3月の ある日、なにげなく過去に撮影した写真の数々を眺めていたところ、大変なもの を発見しました。

 それは 2006年10月、まさに このサイトを立ち上げた頃、『大楠山』「阿部倉コース」で登ったときの写真なのですが…

 なんと その中に、偶然『きぬがさ給水塔』が写り込んだもの があったのです!

 1・2枚目は、おそらく『横浜横須賀道路』の下をくぐれる通路の近くから 東のほうを撮影したものです。
 小さくて分かりづらいので拡大版もつけています。

 3枚目は、登山道の途中の木々の隙間から 東のほうを撮影したもので、木々の窓の右ギリギリに給水塔が見えています)




 「どこにあるのか? きぬがさ給水塔…」などと、悩み 探しまくっていた当時の自分でしたが、実は 写真だけは すでにゲットしていた という冗談のような お話。

 笑うやら 泣けるやら 懐かしいやら、何とも複雑な心境にさせられましたが…

 1つだけ確かなのは、
 また1つ、自分にとっての「宝物」が増えてくれた という事実です(^^




[ 戻る ]