■ 第21話 『水神さま』
『人型キノコ』が最初に作中で描かれたのが、この第21話です。 アヤセが、初瀬野先生の紹介を通じて、 さいたまの国の見沼入江で拝んだ、 不思議な生物 『水神さま』としてでした。 もっともこの時は 「座り込んで彼方を見ている子供のような白いもの」 として描かれただけで、キノコとは一言も表現されていません。 (キノコとの関連が分かるのは、後の話になります) 遠目には、『白い大理石のようなもの』… 近寄ってみると、『白いわたのようなものでおおわれ』ており、 顔の部分だけはかなり人間に近く、 『ビロードっぽい細かい起毛で白く光って』いたそうです。 さらに、現地のご老人の話によると、 『脳波がある』、『見つかってから ずっと動かない』、 『見つかってから全然歳をとらない』生き物だそうです。 また、地元の人にも情報が浸透していることから (渡しのおじいさんや、道を教えてくれた女の子の様子からして)、 見つかってから最低10〜20年は経っていることが伺えます。 総合すると、水神さまは、この入江で 10〜20年(見つかる前の時期を考えると、それ以上)も 座りつづけていたことになります。 ここまでで、まず、 『何か、植物的な雰囲気を持った』 『少なくとも10年程度では、見た目の変化が認識できない』 生き物であることが分かります。 特に後者の「姿が変わらない」という部分に、 アヤセはミサゴの姿を垣間見ます。 |
■ 第103話 『崖の水』
新たにコーヒー用の湧き水を探しに出かけたアルファさんが、 海ぞいの崖の小さな湧き水の流れのそばで、 気配に気がついて振り返ってみると… そこには、『白いキノコ みたいなの』が、たたずんでおりました。 これは、この話だけ見ると全く意味不明の 「不思議な話」止まりですが、 少し後の第106話への重要な伏線となっています。 |
■ 第106話 『道の町と住人』
『人型キノコ』を語る上で最大級に重要な回といえば、 この第106話をおいて他にありません。 盆地の町付近を訪れたアヤセは、地元の老婆から、 丘の上の不思議な「ビルのような直方体」が キノコのような柔っこいものであることを教えられます。 そしてアヤセは、アルファさんが海辺の崖で見たのと同じキノコ… さらには、やがて「水神さま」のように成るであろう雰囲気をもった 目をつむったような太めのキノコを目撃します。 ここから推測されるのは… そうです。 アルファさんが見たのは、 やがて水神さまのようになっていく 人型キノコの、若いころの姿だったのです。 そして、老婆の話からして、 あの『ビルのような直方体』もまた、 人型キノコと無関係ではないようです。 11巻・97ページの下のほうのコマは、 アヤセを中心に、上記の2つのキノコと、 彼方の「白いビル」を1つのアングルにとらえており、 実に深い意味を感じさせます。 「いつも何か気配がするし」という老婆の言葉も、 『脳波がある水神さま』との関連を読者に示しており、 この106話は事実上、水神さまの正体が確定した話ととらえても 過言ではないのではないでしょうか? |
■ 第128話 『視線の星』
千葉の国の『刑部岬』。 小さな灯台のような建物のそばで一晩を明かしたアヤセ。 そのそばには、成人女性を思わせる人型キノコ… このキノコも、地元の人にとっては 「お参り」の対象となっているようです。 この128話では、106話をさらに押し進めた情報が書かれています。 『(キノコは)ほぼ例外なく 水というか 景色の見える所にいる』 それは「水神さま」にも言えることであり、 アヤセ自身は知りませんがアルファさんもまた 「海辺の崖」という水辺で、初期状態のキノコと対面しています。 人型キノコと水辺が、切っても切れない関係にあることが、 ほぼ確定する話です。 |
■ 第140話 『ヨコハマ買い出し紀行』
今回、人型キノコについての話を追ってみて驚いたのが、 「キノコの出てくる話って、たった5話しかなかったのか!」でした(笑) 印象深い存在なので、 もっと登場しているとばかり思っていたのですが… この話では、キノコ情報に関する、 最後にしてかなり重要なヒントが書かれています。 『白い人型キノコがあります 〜 そこは 〜 昔から人々がたたずんでいた場所 〜 地面がおぼえている「人の記憶」です』。 これを読むと、プロセスは何であれ、 『人型キノコは、地面が憶えている記憶を養分として育つ』 ことは一目瞭然ですね。 一目瞭然なら、そういう考察しろよ、2007年の自分! すみません、当時はちょっと、こうしたオカルトげな設定を 受け入れられる度量が自分に無くて、 それを外してでも成り立つ範囲で考察させていただきました。 今は大丈夫なので、受け入れます。 もうバンバン(笑) |