■ 小網代の入江
               (京急編)
神奈川県 三浦市 初声町 下宮田
【最寄】 京急 『 三崎口 』
撮影 2006/10/28








 京急の終着駅、三崎口。 ここで降りた人の中には、この駅に違和感を感じた方もあるのではないでしょうか?


 まず、「三崎口」という名前。 終点にしては変なネーミングです。

 駅構外に出てみると、あまりにも閑散とした風景。

 そして、そばの国道134号の下をトンネルで突っ切っているにも関わらず、そのすぐ先でプッツリと途切れている線路…



 線路が途切れていなければ、とても終点とは思えないチグハグさです。

 どうして有名な(そして便利な) 三崎港 あたりまで延ばさなかったのでしょう?






 そんな疑問を感じながら時を過ごしていた、ある日…

 2004年3月のことでした。



 電子地図に移行して以来 ほとんど使わなくなってしまった、10年以上前に発行された「ハンドマップ」をなにげなく読み返していたところ…

 不思議な表示 を発見したのです。







 上の地図(着色などの加工をしてあります)が それなのですが…

 「三崎口」からさらに南に向かって、点線が延びているのです。

 しかも、京急バス停『小網代』 のあたりには、 すら描かれているではありませんか!



 「えっ? 何? あそこって、地下鉄でつながってたの??」 と仰天しましたが、この付近を歩いたときにそんな物は見た憶えがありません。






 そのとき思い出したのが、最初に書いた、『三崎口』 に感じていた 数々の違和感 でした。


 ピン、と来てネットで調べてみたところ…

 やはりそうでした、『延線計画の中止』

 以前、「京急路線を、三崎港方面まで伸ばそう」 という計画があったものが、中止になっていたのです。



 以下は、このページを書いた2007年4月に、ウィキペディアにあった記述から抜粋したものです。(ちょっと長いですが、ぜひご覧ください)


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 久里浜線は三浦市の中心部、三崎港付近までの建設が元々の計画であり、そのための第一種鉄道事業の免許も取得していた。



 しかし、三崎港付近での用地確保が困難なことから油壺以南の免許は1970年に失効し、延伸計画は三崎口〜油壺間2.1kmに短縮された。

 油壺駅までの延伸も用地買収が難航したため三崎口駅までの暫定開業となり、市街地への連絡はバスに依存する状況で現在に至る。



 三崎口駅三浦市街から遠く、以南が建設されるまでの暫定的なターミナルという位置付けだったが、京急社内ではあまり重要視された計画ではないため、空港線の建設などを理由に免許取得から長期間放置されてきた経緯がある。

 運輸政策審議会の答申によればこの区間は2015年までに開業することが適当であるとされるが、延伸には環境問題を理由とした反対があり、三浦市初声町三戸地内での土地の買収も難航したため、計画は頓挫していた。



 そのため、京浜急行電鉄側は一度三崎口〜油壺間の免許を廃止することを決定、2005年10月7日、事業廃止届出書を国土交通省に提出した(12月24日廃止実施)。

 但し、免許の廃止は延伸計画を断念するものではなく、延伸区間の見直しや再整理を行い、地元地権者や三浦市と相談をすることで事業を円滑に進め、ある程度計画がまとまってから免許を再申請するとのことである。

 但し、再始動するにしても京急蒲田駅付近の連続立体交差化事業が終わってから、とされている。



 計画では油壺地区の東側にある丘陵地帯に駅を設け、付近にバスターミナルや住宅団地を併設、さらに駅前整備に連動する形で油壺地区や小網代地区の道路が整備される予定であった。

 しかし、貴重な自然林であり神奈川県が保護を打ち出している「小網代の森」を通過する形で路線が敷設される計画のため環境保護団体の反対も根強い



 京急は免許再申請の際は三浦市を交えてルート変更も考えるとしている。

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 もともと三崎港まで延ばす予定だったものが、土地がうまく買えずに頓挫…

 油壺まで短縮して再挑戦するも、やはり土地売買が障害になって頓挫…

 という歴史があったそうです。



 線路を敷くに適した平地が少ない三浦市では、そうした少ない平地にかたまって暮らしていらっしゃる地元の方々からの土地買収に、相当の資金がかかることももちろんあるでしょうが…

 京急にとって最大のネックとなっているのは、やはり、三浦市中央部にドンと横たわる 『小網代の森』 の存在ではないでしょうか?


 ルート変更の案も検討しているらしい京急ですが、背骨となる国道134号を中心に尾根のような地形の三浦市のこと… 選択肢は少ないと思われます。










 電車が開通すれば、ベッドタウンとしての価値に目を付けた不動産業界三浦市南部が食い荒らされるのは目に見えています。

 それは、すでにベッドタウンと化した三浦海岸駅付近の、急成長による統一感のない光景を見れば明らかです。



 そう考えると、都心の比較的近場にありながら、三崎港付近があのような懐かしい町並を奇跡的にとどめられている理由は、『小網代の森』 の存在と、その地主さんたちを中心とした地元の努力にこそある… と言えないでしょうか?



 京急には旅でお世話になっているので、個人的には応援したい会社ですが、延線計画だけは、今後も頓挫し続けてほしいと思っています。


 三崎港の町並自体を観光資源と考えれば、ベッドタウン化によるその消失は、三崎の町の観光的価値の激減を意味します。

 長期的視野の無い開発は、町1つをあっけなく衰退させますし、それはもちろん、京急の減益とも直結します。

 加えて、鉄道路線が延びれないおかげで、結果的に近辺のバス路線が繁盛している… という面も、あるのではないでしょうか?



 『小網代の森』 には、いつまでも残ってほしい…


 こう書くと、地元民ではない者の感傷に聞こえるかもしれませんが…

 将来的には三浦に住むつもりの自分ですので、鉄道が敷かれない事による不便さも含めて、決して「他人事」としては考えていないつもりです。 





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