■ 夏島
神奈川県 横浜市 夏島
【最寄】 京急バス 『 日産研究所 』
撮影 2007/07/24




 今回は ナツ島 をご紹介しましょう…


 と言っても、大半の方は「ナツ島??」と首を傾げられると思います。

 「ヨコハマ〜」書籍をすみずみまでよーく読んで、しかもズバ抜けた記憶力の方だけが、「もしやアレか?」と気づかれたのではないでしょうか?



 それでは、答えとまいりましょう。 ナツ島とは…

 「ポストカード・ブック」の最初のページの、夕凪時代の三浦半島マップに描かれている、Natsu I. (ナツ アイランド) のことであります。



 「このサイトの管理人も、ネタに困ってついにこんな所まで手を伸ばしやがった」などとおっしゃりますな(笑)

 この島、夕凪マップの中でもちょっと異例の存在なのです。

 「ポストカード・ブック」をお持ちの方は、ぜひページを開いて、いっしょにご確認ください。 できれば、我々の暮らす21世紀初頭の地図も用意すると確実です。

 …よろしいでしょうか? では始めましょう。



 夕凪マップをぐるり… と見回すと、名前の分かっている「島」が、計5つ存在します。 西から反時計回りに見ていくと…


 【 Nagai I. 】(長井島)… 現在の「長井」近辺の丘が残って島になったもの。

 【 Jo I. 】(城ヶ島)… 現在もある観光名所。

 【 Kamoi I. 】(鴨居島)… 現在の「浦賀」近辺の丘が残って島になったもの。
          鴨居は、観音崎灯台などがある、島南東部のかつての名称。

 【 Saru I. 】(猿島)… 現在もある、かつての要塞島。



…と、ここまでは以前からあったり、現在も島であったりするので、納得の行くものばかりです。

 ところが「ナツ島」と呼ばれる島は、東京湾内にはありません。

 また、該当すると思しき場所を地図で調べても、日産自動車住友重工工場などがズラリと並んだ、外周が直線で囲まれた平らな埋立地が広がるばかり…

 一時は「八景島シーパラダイス」の事かと悩んだりもしたのですが…



 ようやく見つけました、工場の敷地のド真ん中に。

 その名も『夏島貝塚』

 地図で見るかぎり、この近辺だけ唐突に40メートルほどの高さに盛り上がっています。 ここが残って島化したのが「Natsu I.」なのでしょう。

 それにしても不思議な地形です。

 これは一度 見に行かねばなるまい。 島になる前のナツ島を…






 というわけで下調べを始めたのですが、愕然としました。

 駅から現地まで最低3キロあるのに、直接「夏島」に行けるバスが、午前9時から午後2時後半まで、1本も出ていないのです。

 同ルートを通る別系統のバスですら、1時間に1本かぎり…



 考えてみれば、無理もないことです。 なにしろここは工場地帯
 朝夕に工場に通勤する者以外、そうそう人の行き来があるとは思えません。

 という事は、道中には、コンビニやトイレも期待できないでしょう…


 あれ? でも、夏島貝塚 を見に行く人は、どうするんだろう?



 等々、疑問や不安はあれど、とにかく出かけてみることにしました。

 夏島まで直接行くバスは少なくても、途中の 「京急バスの追浜車庫」 までなら、15分に1本程度と、それなりの本数が出ていたからです。



 朝、梅雨の合間の上天気を見て唐突に出発を決めたので、最寄の『追浜』に着いたのがすでに午前10時半。 当然、通勤時間帯のバスは終わっています。

 バス停が、駅から異様に離れていたのには、ちょっと驚きました。
 ようやくバス停に着いて時刻表を見ると、次が来るまで10分ほどあります。


 ここで、いつもの感覚で「バスに追いつかれたら乗るか…」と、先のバス停に向かって歩き始めたのが運の尽きでした。

 バス停の無い場所でバスに追い抜かれ(泣)、気づけば駅から1.7キロの バス停『追浜車庫前』 まで、徒歩だけで到着する羽目に陥ったのです…

 夏の盛りなので、体力はできるだけ温存したかったのに…



 時刻表を見ると、次の 夏島方面行き のバスは40分後…

 現地までは1.5キロなので、待っている間に歩いて到着できます。

 というか、バス停と広いアスファルト道路しかないこんな場所で、夏の太陽を40分も浴び続けたら、ひからびて死にます。 やむなく、先へと歩き出しました。






















 この付近は、工場メインという事もあって、直線ばかりの光景です。


 まーーっすぐで広いアスファルト道路の両端には、高さ2メートルほどの灰色のコンクリ壁が無機質に延々と続き、その向こうに銀色や白の巨大な建物が無言で居座っています。

 陽光を浴びて、デルタ型の銀の屋根がギラギラと輝きながら延々と続く様は、巨大なノコギリを思わせます。

 彼方に頭だけ見えている太いエントツや巨大クレーンは、距離のせいか、ほんのり水色に霞んで空になじんでいます。




 普通に生活している分にはほとんど見かけないこれらの光景を見ているうちに、「だまし絵」を見るような非現実感が湧いてきて、うっすらと 不気味 な心地になってきました。

 それでも、途中から 夏島貝塚 らしき丘が、工場の屋根の向こうに見えはじめた事もあり、目的地が見えている安心感にも支えられた1.5キロの徒歩はアッという間でした。



 記念碑のようなものが見えてきたので、「これが夏島貝塚か?」と近づいてみたところ… 『明治憲法 起草記念碑』 でした。

 伊藤博文らが、大日本帝国憲法 の原案を、ここ夏島で秘密裏に準備したそうです。



(それで分かったのですが、この夏島
 元は、陸から1キロほど離れた、本当のだったそうです。

 付近を埋め立てて、現在の姿になったのでしょうね。

 僕は当初、夏島とは、『単に地名に「島」がついていただけ』 の 海辺の丘 だとばかり予想していたのですが…

 実は逆に、僕が今まで歩いてきた陸地こそが、かつては海 だったのです。

 「夏島は、夕凪マップの中でもちょっと異例の存在」 だと思っていたのですが、決してそんなことは無かったのですね…)











 さて、丘には着きましたが、麓はズラリと金網で囲まれて、一向に夏島貝塚への入口が見当たりません。

 しかも、入口を探して道路ぞいに東へ進むうちに、ジワジワと丘から離れはじめたではありませんか!

 え? 何? 「夏島貝塚」て入れないの??



 どうも そうらしいのです。

 公園などがあって、近くから眺める程度のことができると踏んでいたのですが、遺跡のある丘には関係者以外立入禁止だとか… ゲゲーーーッ!!

 バスの本数が極端に少なかった理由に、深く納得いたしました…



 取りあえず、夏島貝塚のあるの写真だけ撮ってきました。

 やがては島になる丘だと考えると、趣きも違いますねコンチクショウ。

 あぁ、登りたかったなぁ…

(上が、から。 下は、南東から見た山の姿です。)


 それにしても、こうして眺めると、本当に「島らしい丘」ですね。

 もっとも、元が島だったものが、付近が埋め立てられたせいで「丘」になったわけですから、当然といえば当然なのですが…(苦笑)

 夏島も、そんなことで誉められても不本意でしょう。 ごめんね。



 この後、工場道路の終点(海洋科学技術センターがある)まで行って、Uターンし、後ろから追いついてきたバスに乗って追浜駅に帰りました。

 結局、全行程中、約5.5キロを徒歩でこなした計算になります。

 この日は、この後さらに、三浦半島内のヨコハマ名所の写真を撮るために4〜5箇所を徒歩で周ったので、本当に大変でした。

 夏の直射日光は、度を過ぎると殺人的ですね。



 なお今回は珍しく、僕の旅の思い出を中心にテキストを書いてみました。

 2回に1回はこんな風に、そのときの気分で行き当たりばったりに行動して大変な目にあっています。

 いや。 これもまた、「旅の醍醐味」なのでしょうが… とほほ〜






 それではアクセスです。


 京急『追浜』 から、『追浜車庫』方面行きのバス(複数ある)に乗って、バス停『追浜車庫前』で降りてください。

 そこから、北へ1キロちょっと、東へ300メートル歩けば、貝塚のあるの麓に到着します。

 全体を見渡すのなら、さらに300メートル進んだ 『日産研究所』 の入口・駐車所付近が良い感じです。



 もし運良く「住友行き」のバス(1時間に1本)に乗ることができたら、前述の 『日産研究所』 のバス停まで行くのがオススメです。

 名前に騙されて、1つ手前の バス停『夏島』 で降りてしまうと、「日産研究所」まで 800メートルほど余計に歩くハメになるので注意です。


 いずれにしろ、駅構内にあるバス案内を確認の上で進んだほうが安全です。

 バス停自体は、駅の東に、4ヶ所が離れて点在しています。



 現地には当然ながら、トイレ・自販機の類は一切ありません。

 帰りのバスも、『追浜車庫前』 まで戻らないかぎり、1時間に1本です。


 夏島という風情ある名前にだまされて、陸の孤島で焦熱地獄に遭う愚行は、僕を最後としたいので、皆々さまにおかれましては、ゆめゆめ現地に足を運ぶことのありませんよう… (じゃあ紹介すんなよ)



 あと、後日 京急の資料を見ていて気がついたのですが、夏島周辺に向かうバス路線て、「三浦半島1DAYきっぷ」の 適応範囲外 らしいです。

 僕、切符を見せるだけで降りちゃったんですけど… あわわわわ。





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