■ 西の岬
            (黒崎の兄弟 編)
北海道 函館市
【最寄】 JR 『 函館 』
撮影 2005/02/27 ・ 2006/10/29 ・ 2007/05/26 ・ 2007/05/27






 2007年の5月下旬… 自分は、北海道国道5号線 を南下しつつ 函館 を目指す、自動車の中にいました。


 両親との、2泊3日の北海道旅行。 時刻は、午後3時すぎ…

 先ほどまでの小雨はやみましたが、相変わらずの曇り空…

 「これでは、楽しみにしていた函館の夜景も、雨でオジャンかな…」 と寂しい思いで窓の外を見ていた自分の視界に、そのとき、不思議なものが映りました。

 前方の彼方に、黒々とした軍艦のようなものが横たわっているのです。



 それは、函館山

 函館の夜景は、この山の山頂にある展望台から見下ろすことになるのですが、夜景ばかりに意識が行って、函館山の姿については今まで見たことも考えたこともありませんでした。

 それにしても、日本有数の夜景を眺める場としては、なんと無骨で 色気の無い山なのでしょう…



 しかし、そう考える一方で、自分の中に不可解な感慨が芽生えていました。

 それは 「見慣れた場所に帰ってきた」 という不思議な感情…

 正確に言えば 「三浦半島にやってきた」 という、ありえない感覚だったのです。



 たしかに北海道の山々は、その土質によって全体的になめらかで、本州の鋭角的なそれとは決定的に異なっています。 

 だから、函館山のゴツゴツした形状が、本州のそれのようで、懐かしさを感じさせるのでしょうか?

 それとも、函館山の東にある 『立待岬』 から見たやや荒い海が、三浦半島を想起させたのでしょうか?

 そうだと思いました。 …少なくともその時は。



 その日の夜、小雨の降る中を、奥の観光客にもまれながらも函館の夜景を撮影でき、適度な満足感と共に本州に帰還しました。

(写真は、左上が亀田郡南部の国道5号から…
 左下が、五稜郭タワー展望台からの函館山です。)









 そして、月日が流れた 2009年の頭

 唐突に自分は、あの時の不思議な感情の原因を知ることになります。


 それは、過去に撮影したデジカメ写真を整理しているときに見つけた、黒崎の鼻 を、北の 和田長浜 から撮影した1枚…



 お気づきでしょうか? そうです。

 函館山 の姿は、北から見た「黒崎の鼻」を左右反転して、ちょっと縮めたような形状 そのものだったのです!



 北から見た形状が反転したものなら、南から見れば正にウリ2つなのでは? と考えそうになりますが…

 南から見ると、すぐ後ろに長井の丘を背負ってしまい、黒崎鼻の形状があいまいになってしまうのです。(左下の写真)


 この 岬の形状自体は長年見ていたのに、よく似た色の背景に溶け込んだ姿しか記憶していなかった…

 それが、すぐには思い出すに至れなかった、モヤモヤ感の原因だったのだと、今では理解できます。


 僕は、自分でも気がつかないまま、なじみの三浦の光景を、はるか北の函館の地で見ていた のです。




 いつかあなたが、函館市を訪れる事があれば…

 その時は函館山に、はるか700キロを隔てた兄弟の姿を映し見てほしい。

 20倍近いスケールの違いがある両者の、不思議な相似性を愛でてほしい。



 …などと身勝手な感慨を抱いている、今の自分なのです(笑)












 最後にオマケとして、函館の夜景 をご覧ください。


 山頂からの写真2枚は、やや霧のようになった小雨の中で撮影したため、ボンヤリしてしまっていますが…(苦笑)



 赤レンガ倉庫 の写真を撮るころには市内はザンザカ降りになってしまったのですが、おかげで路面が鏡のようになり、一風変わった写真になってくれました。

 彼方に見えている光は、函館山の展望台です。





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