■ 作品の舞台となった
場所を探す手順






僕が 2006年秋ごろから、精力的に 三浦半島
『ヨコハマの舞台となった場所』 を探しに行くようになって、
2009年8月
現在で すでに3年近くが経過しました。


当初ピックアップしていた百数十箇所のうち
半分近くを突き止めましたが、

逆に言えば、まだ50箇所近くが手付かず、
あるいは不明のまま

になっている事になります。



これにはいくつか理由がありますが、
大きなものは3つ。



1つは、『作中の描写から得られる情報が少ないこと』

もともと、ポイントを抽出したような描かれ方をしている作品なので、
空気の密度が高い一方で、風景があいまいになり、
遠方との位置関係が分かりにくくなっているのです。



もう1つは、『芦奈野先生の心の中の風景であること』

ヨコハマ内の風景は、作者である芦奈野先生「心の目」が入っており、
横須賀中央公園の夜景のようにすでに存在しない風景であったり、
あえて自分の理想の光景に改変されていたりするので、

コマに描かれた風景に100%合致した場所を探そうとすると、
かえって見つからなくなることが多い
のです。



そして最後の1つは、『1人で探すには限界があること』 です。

口幅ったい事を言えば、僕の 三浦市近辺 の地理知識は、
地元の方に 「地元の方ですか??」 と言っていただける ほど、
現地に密着したものです。

…が、それでも所詮は 「1人の目」。

『見えていても気づけないもの』 も当然あり、
そこに限界を感じつつあるのです。






そういう いきさつもあって、今回は、

自分は今まで、どうやって
『舞台になった場所』 を見つけてきたのか?


を、皆さんに 公開(笑) しようと思い立ちました。




3年前のサイト開設当初は、
『日本一のヨコハマ現地系サイトになるのだ!』
意気込んでいたのですが…

実際に達成してみた(と自分では思っています) ら、
ウチ以外に稼動しつづけている現地系サイトが皆無
という寂しい状態になっていました…


連載が終了した作品なので致し方ないとも思うのですが、
『ヨコハマ〜』 は 一生もの の作品。
今後も新しいファンの方が、その空気を求めて、
三浦半島へと足を運ぶことも多いと思うのです。



『この風景が、芦奈野先生の心に作品世界をつむがせたのか』

という感慨を得られる場所…

それが、舞台となった現地です。



新たな探索者が、作品の世界と三浦半島の空気を
これからも つなぎ続けてくれる
ことを信じて、

以下に 可能なかぎり、
自分の 探索テクニック を紹介していきます。








■『出会いたい風景のコマを探す』






まずはコミックス内から、
出会いたい風景 を探しましょう。


見つかるかどうかは 二の次です。


『このコマの風景の中に、自分も立ちたい!』

その強い思いが、僕らが舞台となった場所を探す原動力です。






■『三浦半島に行く』






野球が上手くなりたければ、基礎運動ももちろんですが、
まずは、『ボールを投げてみる』 『バットを振ってみる』
 
当然の事ですね。


ならば、ヨコハマの謎を解明しようとする者が、まずは

『その舞台となる三浦半島の空気にふれる』

事から始めるのも、当然とは言えないでしょうか?



あるいはバイクで、あるいは徒歩で。

「ヨコハマ買い出し紀行」 を産んだ土地の空気を、
あなたの肌で感じてみてください。



一度でも 三浦半島現地 を訪れれば、

今までどうして見えなかったのか? と首をかしげるほど、
作中の様々な事実が 実感 されるようになる事でしょう。






■『すでに他人によって
発見されていないか確認』







「他人がすでに発見していてもかまわない」
という方も もちろんいらっしゃるでしょうが、
どうせなら『自分が一番乗り』したいですよね(笑)

その意味でも、
検索エンジンで事前に確認しておく
ことは とても重要です。



ここで重要なのは、適格な検索

自分がサイトを運営していたら、どんなタイトルをつけるだろう?
どんな名前でこの場所を呼ぶだろう?

という発想が大切です。


一番ありがたいのは、『北の大崩れ』 のような、
おそらくヨコハマ世界でしか使われていない地名の場合です。

検索ヒット数も少ないので、もれなく情報を収集できます。


逆に、『西の岬』 のようなありふれた単語は要注意。

「特定の場所から西方向にある岬」全般はもちろんの事、
『南西の岬』 『北西の岬』 といった単語まで引っかかってくるので、
ヒット数がとんでもない事になります


一応、『ヨコハマ買い出し紀行』 『カフェアルファ』 などの関連単語で
AND検索すれば、関連情報が見つかりやすくなりますが、
『西の岬』単体で深くつっこんだ情報を載せているページが
引っかかってくれるかどうかは、運まかせになってしまいます。


ちなみに、言葉の両端を、 ” (ダブルクォーテーション)で囲めば、
検索エンジンが勝手に類似単語を推測するといった
ブレも少なくなるので、お勧めです。

(例としては、 ”変に青く波のない水面” という感じです)








■『作中の描写から位置を推理する』
(遠方の目印 編)




続いては、情報源である コミックス から、
できるかぎりの情報を引き出すテクニック
を説明していきます。



まずは初歩的な、
『遠方の目印 から相対位置を割り出す』 テクニックです。

これは実生活でも自然に使っているものなので、
ピンと来る方も多いことでしょう。



例えば、夕方の場面で、
太陽描かれている方向は…

当然、西ですね。



また、高い山の少ない三浦半島では、
『大楠山』 の描かれ方から
相対的な方向を割り出しやすいですし…





海の向こうの半島の形で、
房総半島 か、西伊豆半島 かも分かります。

(これはもちろん、芦奈野先生がキチンと資料を元に
描いて下さっているおかげと言えます)




ポイントを切り抜いたような描写が多い 「ヨコハマ」 ですので、
たまに遠方まで描かれているコマは、貴重な情報源。

見逃さずにおきたいものです。




ちなみに、サイト 『コアジロ買い出し紀行』 の
管理人 coconeさん
が、
「さりげなく描かれたものにこそ事実がある」
と書いておいでのとおり、

芦奈野先生は、『実在するものは、
作中でもシッカリ(具体的に)描写する』

という傾向を お持ちです。



つまり、「ヨコハマ」 を読んでいて、
遠方の小さな建造物が
やけにシッカリ描写されていると感じた
ら、

それは ほぼ100%、実在する(あるいは実在した)建物
と考えて間違いないわけです。


その辺りも、重要なヒントとして
見逃さないようにしたい所です。






■『作中の描写から位置を推理する』
(前後から推測 編)




例えば、1巻・122ページの、
初日の出を見に行くアルファさんたちが
途中で立ち寄った、缶コーヒーの自販機





単にこのコマだけ見てみても、
夜ということもあって周りが分からず、
場所の特定は 不可能 のように思えます。




ところが、その前後 に目を向けてみると、状況は一変


『カフェアルファから出発した』 ことに加えて、
『日の出を見に行ったのは城ヶ島公園らしい』 という事実が
すでに従来のファンによって判明しているため…

『三戸・黒崎 〜 城ヶ島大橋』 間のどこか
という事が、まず推測されます。



また、特に脇道に入った描写も無いことから、

「三戸・黒崎 〜 城ヶ島大橋」 の主要道路である
『国道134号 〜 県道26号ぞい』
と考えて良いようです。



さらに、ある程度走ってタカヒロの体が冷えてしまったことを
察して停まった自販機なので、少なくともカフェアルファから
2〜3キロは走行した後
の可能性が高そう…



以上からまとめてみると、自販機のある場所 は、
『城ヶ島入口』交差点 の前後1キロ程度ではないか?
という推測に辿り着きます。 




「前後1キロて、ずいぶん広いなー」 と、
あなたの心に釈然としない気持ちが浮かぶかもしれません。

でも、考えてみてください。

単なる作り物にすぎないと思っていた風景が、
漫画内の情報を元にしただけで、
これだけ 現実味を帯びた場所 になる快感…


自分の住む国のどこかに、
架空のヨコハマ世界との接点があるような、
不思議な高揚感…



その推測が正しいかどうかは、
この時点では どうでもいいのです。

『自分の推理を信じて、現地に行ってみる』


それこそが、楽しみ であり、

実際に現地に足を運んでみると、
思いもよらぬ 「新事実」 が見つかりがちなのが、
現地考察の不思議なところなのですから…






■『作中の描写から位置を推理する』
(何度も登場する場所 編)




先ほど紹介した 『コーヒーの自販機』 には、
ちょっとした 後付け情報 があります。

9巻・101ページ で、アルファさんとココネが、
この自販機に、再度 訪れているのです。







すると、面白い事実が見えてきます。


アルファさんたちは、
『変に青く波のない水面』 を眺めた後で、
この 自販機 に立ち寄り、

最後に 『ここらじゃ一番高い丘』(岩堂山)
南西斜面 から登ったようですが…
(漫画内で描かれているカーブの形状は、南西斜面のものです)




ここで、うちのサイトを詳しく読んでくださっている方は、
首をかしげられるはずです。


『変に青く波のない水面』
三浦市の中央東側 にあるのに、

どうして、それより にある 『岩堂山』 に
南から登る必要があるの?
と。

流れから行けば、
北斜面から登ったほうが近道 のはずです。




ところが、この矛盾こそが、
先ほどの自販機の位置の裏づけ となります。


南西斜面を登ってきたアルファさんたちですが、
では逆に、南西斜面を下った先には何があるでしょう?


そこには、宮川湾 や、三崎の町
あるいは、城ヶ島大橋 の根元などが存在します。


そして それは、
先ほど 1巻から推理した自販機の設置範囲 である、

『城ヶ島入口の交差点付近1キロ』

と合致するのです!




9巻 だけを読めば首をかしげるルートも、
1巻 の情報と合わせれば 整合性がとれる

推理した 「自販機の位置」 が
かなり正しいことを意味するのです。





新しく生まれた仮説が正しいかどうかは、

そこに色々な値を代入しても、
常にであることから立証されていきますが…


ヨコハマの舞台探しも、
それと同じだと思うのです。







■『作中の描写から位置を推理する』
(セリフ 編)




セリフが少ない 「ヨコハマ〜」 は、それだけに、
わずかな一言が貴重なヒントになる事があります。


『変に青く波のない水面』 も、その1つでした。


僕にとっては、(たしか)初の
『他のサイトさんからの情報が皆無の状態から、
自分の推理だけで場所を特定した』 思い出深い土地
です。




ヒントになったのは、ココネの、
『山の中に変に青く 波のない水面が ありました』
という一文…

そして、アルファさんがココネに話した、
『くねくね曲がった谷の奥まで入りこんだ海』
という説明です。



ヨコハマは、海面上昇 の時代の物語。

彼女たちの会話から逆算すると、
この場所は、僕たちの暮らす 21世紀 には、
『くねくね曲がった谷になっている、標高の低い場所』
である事が推察されます。


となると、1つ問題が浮上します。

三浦市近辺 には、
たしかにクネクネ地形は多いですが、

その ほとんどは、現時点で すでに海水が入り込んで
谷状の湾
になってしまっているのです。

(三浦市西部の、『油壺湾』 『諸磯湾』 など)



そんなわけで、半ば調査をあきらめていたのですが…

「Google Earth」 で遊んでいたとき、
『大三叉路』 の ちょっと南に、
おもしろい物を発見したのです。


それは、小さな池 でした。


この近辺はグルリと森林で囲まれており、
実は僕も 「Google Earth」 で見るまでは、
一帯が深い森だと 長い間信じ込んでいた ほどの場所です。

あまりに珍しいので、興味を持って調べてみたところ…




実はその近辺が

『谷がクネクネと奥まで伸びている』
『谷の地面(標高)は奥のほうまで低いまま』


な場所だと分かって ビックリ仰天!


ココこそが、『変に青く波のない水面』 なのでは!?
と現地調査に乗り出し…


その調査結果から、確信 するに至った…
というのが、経緯だったのです。






もちろん、単なる地形や標高の符合以外にも、

『子海石診療所から、海沿いの砂だらけの道を南下』 した先にあり、

『岩堂山から、ある程度近い』 という複数の後押しがあった事が、

最終的な特定の材料となったわけですが、

なにより、アルファさんのセリフが、
全てのキッカケであった
ことは間違いありません。




珍しいケースではありますが、

セリフ1つ1つを吟味すれば、
一見不明な場所に見えて、
実は作中でほとんど答えを言っている
場合がある
、という好例です。








■『画像検索も活用する』



「僕は、三浦半島近辺に住んでいないから…」
腰が引けてしまっている君には、
Google などの 画像検索 をお勧めします。



例えば 「三浦市」 という言葉で画像検索すれば、
当然、三浦市関連の画像が閲覧 できるようになりますが、

これを上手に利用すれば、
漫画内の舞台となった場所の 下調べ
などもできるようになるのです。






かくいう僕も、もちろん 利用しています。


足しげく通っているとはいえ、場所によっては
バス停から往復5キロ程度は当たり前三浦半島

勇んで訪れてみて 「ハズレでした」 では、
済まない場合も多いのです。

(1回の訪問で、半島内の4〜5ヶ所は周るので、
時間を無駄にできない点も大きいです)




もちろん、然るべき情報を得るための、
適格な検索単語の選択
が求められますが、

「その風景が見れると推測される場所の地名」 で検索すると、
比較的 必要な風景が手に入りやすいように感じています。




ちなみに、『Googleストリートビュー』
使うという手もあるのですが…

道路からの眺めしか得られないことと、
主要道路付近だけとはいえ、外国の一企業が
国内のリアルタイム性の高い地理データを取得する行為を
容認するような不快感
があるので、
僕は極力 使わないようにしています


(…と、2009年 当時は言っていたのですが、
2017年 現在ではバリバリ活用させていただいている自分です。
非国民で ごめんなさい(切腹))







■『芦奈野先生の気持ちになる』



「ヨコハマ」 が創作物である以上、

そこには作者である芦奈野先生個人の
さまざまな 思惑 や こだわり
内包されているのは当然のことです。



逆に言えば、「舞台となった場所を推理する」上で、
『芦奈野先生は、なぜ その場所を選択したのか』
を考える事は、とても重要なことだと思うのです。


『単に風景の美しさ』?

『思い出の場所』?

『ダブルミーニング』?





本当のこだわりを持つクリエイターほど、

さりげないが深い 自分のこだわり
気がついてくれるユーザーや、

そのこだわりに共感 してくれるユーザーを
楽しみにしているものです。



彼らは、商人ではなく 作家 なのですから。



だから僕らも、作中の謎を追うのなら、

作り手の思考に それだけの
「こだわり」 があることを常に念頭に置き、

それだけの深い洞察を
磨いていくべきだと思います。



そうでなければ、

作者さんの用意してくれた真実に辿り着く日は、
きっと 永遠に訪れることは無いでしょう。







■『既存の情報も疑う』



ある 現地系サイトさまのページで、
1巻・100ページ の場面のモデルとなった場所についての
写真が紹介されていました。

それは、野比海岸『久里浜病院』 あたりから
西 に向かって撮影された写真でした。



野比海岸付近にあるといわれている 子海石診療所 から、
(おそらく)カフェアルファ へ帰宅していく途中ですから、
流れ的には おかしい所は無いように思えます…


が、コマの背景の地形 を見ると、
ある 大きな矛盾 があることに気がつきます。

(詳細は こちら で)




ここから分かる事は…

他者がすでに見つけている場所が、
必ずしも正解とは限らない
という事実です。


推測で辿り着く以上、そこには追う人間自身
『単純な勘違い』 『知識の不足』
『自分の見つけたものへの盲信』

が常に付きまといます。


だから、あなたも、
どこかのサイトで すでに紹介されているからといって、
完全にあきらめる必要は無いのです。


あるサイトの紹介を読んだとき、
「何かおかしい」 という矛盾を直感したら、

自分の知識と足で
自分の信じる真実を探しに行けば良いのです。




それは もちろん、
当サイトの紹介・考察 とて同じこと。


もっともらしい顔をして書かれている内容が、
客観的に見ると矛盾を含んでいるかもしれません(笑)



他人の実績を認めつつ、
自分の信念も大切にする姿勢が、
探求には必要です。



君に、僕以上の 「ヨコハマ愛」 があるのなら、
僕の屍を越えて行け!!(生きてますが)


作品をより深く知ろうとする思い がある限り、

連載は終わっても、
『ヨコハマ』の魅力は
あなたの中で永続するのです…











いやはや… 「軽ーく、コツをまとめたらんかい」 と思って
書きはじめたコンテンツでしたが、
まさか ここまで 長大 になるとは…


あまりに書いていてキリが無いので、
結局、全テクニックのうちの 3分の2…

かつ、サワリ程度に
とどめざるをえない結果となりました。




考えてみれば、
『現地考察』 こそが当サイトの背骨…

それを、1ページで語りつくそうという考え自体、
ムチャな思惑だったのかもしれません。

でも、このページを機に、
新しい現地系サイト が出てきてくれたら、うれしいな。



あと、『ここまで調査したのですが、決定打が得られません…』
という現地考察をお持ちの方は、ぜひご相談ください

三浦近辺に関して膨大な写真資料があるので、
お力になれるかもしれません。



もちろん、僕自身も まだ、
50ヶ所 近い考察を残しているわけですから、
『ヨコハマ現地考察』 のゴールは、まだまだまだ遥か彼方…

長くも楽しい旅路です。

多くの 「ヨコハマ」ファン と共に、
この道を歩いていきたいです。



最後に、僕が 2008年の年末に、mixi の「ヨコハマ」コミュで
『舞台となった場所さがし』 に関して発言したコメントを載せて、
当コンテンツのシメとさせていただきます。





縄文海進を基盤としつつも、

そこに作者である芦奈野先生の
お遊びと… 思い入れが加味された世界。

それが「ヨコハマ世界」だと思っています。


一方で、「芦奈野ひとし」 というクリエイターからは、
旅人特有の 「思い出を大切にする」 姿勢を
いつも感じています。



「男性の旅人」 共通の心理である、
自分の心の秘密基地を守りたい気持ちと、
一方で少数の誰かにコッソリ耳打ちしたい葛藤…

僕がヨコハマのモデルとなった土地を追い求めるのは、

そんな芦奈野先生の耳打ちの声が
本編から かすかに響いてくるからかもしれません。





                      2009/08/04 執筆  (2009/11/23 加筆)





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