■ 西の岬は、黒崎か、三戸か?




 西の岬のモデルとなった土地の候補として、黒崎三戸 が2大候補として争われて久しいですが…


…え? 争われてない?

 そんなこと言ってるのはお前だけ??


 だまれ、ガキども。 ネット上にも俺さまと同じ意見の者が、100…
50…  あれ?  5…  いやいや…  えーと、2〜3人ぐらいはいらっしゃったのではないかと思われるんですよ、すぐには思い出せませんけどね… えへへへ。


 そういうわけで(何が)黒崎三戸。 どちらが真の西の岬たるか、俺さまが直々に考察つかまつろうと思いまするが、よろしいでしょうか? いいよね…?
 よーし、考察の結果に文句のある輩はメールにて異論唱えるべし。

 三戸の丘はご存知の通り、僕が京急の終点『三崎口』で降りた初めて日に訪れた、思い出の地。 ここを西の岬と断定できれば、「ヨコハマ〜」と自分の運命的つながりを世間にアピールすることができるはず(できません)


 気持ち、三戸の丘を擁護しつつ、それでは行ってみよう、『黒崎 vs 三戸』

 真の『西の岬』決定戦、ここに開幕です ! ! !







★第1ラウンド 『付近の雰囲気』


まずは、それぞれの丘の風景と、
漫画内で描写されている付近の光景とを比較してみましょう。
(参考映像 : 1巻、裏表紙)




特徴は、『海のそばの家に向かって、ややアップダウンしている道路』


そして以下は、それぞれの丘の道路の写真です。


黒崎 三戸

 


 




こうして比較してみると、両者が実によく似ているのに驚かされます。
(もっとも規模的には、黒崎のほうがはるかに広大です)


強いて言えば、元々飛行場用地として整備された平坦な黒崎に対して、
小ぶりでアップダウンのある三戸のほうが、漫画の風景により近いですが…

一方の黒崎は、初瀬野邸を思わせる異国的な別荘(?)を先端に乗せていることで有名。
その風景が、作者さんに「海辺のカフェ」のインスピレーションを与えた可能性は否めません。
(あの家がいつごろから建っているのかは不明ですが…)

また、地面のアップダウンは、漫画内で描写されている富士山から、
頂上部が消し飛ぶほどの大噴火があったことが読み取れ、
そこから想定される大規模地震が近隣の土地を変形させた…
と考えれば、現在の土地形状だけでは断定できません。


以上から、『付近の雰囲気』に関しては、
やや黒崎に分がある と考えます。





★第2ラウンド 『小網代の森との位置関係』


続いては、「小網代の森でのみ行動するミサゴ」と「カフェアルファ」が
同時に描写された事で、初めて両者の位置関係が判明した第23話…

そこから推察してみましょう。
(参考映像 : 3巻、120ページ)




小網代の森に住むミサゴからカフェアルファが目視できる以上、
『小網代の森とカフェアルファの距離はせいぜい500メートル』


となると、黒崎は圧倒的に不利になります。 小網代の森までの距離は、なんと2キロ

たしかに、森自体が時代を経て拡大した可能性はありえます。
僕自身も、「もし黒崎付近まで森が拡大したら?」と想像して、
将来「小網代の森」となる場所 を紹介した事もあります。

が、「小網代湾から2キロも離れたこの森を『小網代の森』と呼んでいいものか?」
と悩みながら書いたのも事実…

対する三戸は、いうまでもなく小網代湾に隣接する丘で、
第23話だけ見てしまえば、もう『三戸の丘 = カフェアルファ建設予定地』
断定してしまっても良いほど。


以上から、『小網代の森との位置関係』に関しては、
三戸の圧勝 と言えるでしょう。





★最終ラウンド 『広域の位置関係』


最後は、カフェアルファの位置を語る上で絶対に外せない
唯一無二の資料、第1話の見開きを検証します。
(参考映像 : 1巻、26ページ)




上の画像は小さくて分かりにくいので、皆さんも手元に1巻を持ち、
できれば三浦半島西部の詳しい地図を片手に読み進めていただきたいと思います。


まず、左上の彼方に見えている島…
これは言うまでもなく江ノ島です。

続いて、その右下のほうの三角形の岬…
この特徴的な形状は、北の大崩れこと長者ヶ崎です。


同様に、さらに右下に見える、先端付近に水没した建物のある岬は
佐島と思われます。 とすれば、建物は佐島マリーナでしょう。

(ついでながら、そのすぐ南の湾のずっと奥(右)に並ぶ建物群は
陸自の武山駐屯地内の施設と見られます。)



さらに南下した丘の真ん中あたりに、広い平地と、中央の建造物…
これは、今は無くなってしまったそうですが、
航空自衛隊レーダー施設があったそうです。
つまり、長井・荒崎付近と考えられます。



さあ、重要なのはここから!



見開き最下段の「カフェアルファの乗っている丘」を、仮に 黒崎 とした場合、
実はいくつか府に落ちない点が出てくるのです。


1つが、『長井から離れすぎている点』

← は、黒崎鼻から見た長井方面なのですが、
ご覧の通り、小さな湾を隔ててすぐ向こう側が長井なのです。
レーダーまでの距離は2キロもありません。

また、長井との間にある、ページ右中央付近の岬も気になります。
たしかにこの辺りには、現在でも初声町 和田の丘がある場所です…
が、『和田の丘はこんなにドド〜ンと突き出してはいない』のです。

↑先ほどの写真の右端にちょっぴり顔を出しているのが、その丘。
荒崎から黒崎へグルリとのびている和田長浜の海岸線から
少しだけ顔を出しているにすぎない和田の丘にしては、
ちょっと大きすぎるように思えます。



逆に、カフェアルファの乗っている丘が、三戸 だとしたらどうでしょう?

その場合、先ほどの「ページ右中央付近の岬」は、なんと黒崎になりますが、
荒崎と三戸を結んだ直線よりやや内側(右)に位置する事といい、
よく見ると岬の上に『電信柱の列』をしたがえている所といい、
現実のそれと、かなり状況が酷似しているのです。


さらに注目したいのが、その岬と、初瀬野邸のある岬の間にある水面

浅い部分がほんのり灰色になっていますが、
和田〜黒崎間は、黒崎側に100メートルほどの小さな港をもった形状で、
ここまでゆるやかな影を見せるとは思えません。


逆に、黒崎〜三戸間には、
三戸海岸がゆるやかなカーブを描きつつ海に面しています。
灰色部分と、形状が実によく似ているのです。



以上から、断言せざるを得ません…


カフェアルファ建設の地は、『三戸の丘』である と。


長年、「黒崎 = カフェアルファ」と信じて通ったファンの方々には
たいへんにショックな事実を告げる形になりましたが、
黒崎との思い出とは決別し、今後は三戸の丘にて
将来訪れるであろう夕凪時代への思いを馳せていただきたいと思います。


長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

それでは!







 後までお読みくださり、ありがとうございました。

 この結論に、背筋が凍りついた古くからのファンの方もいらっしゃると思いますが、ご安心下さい。 最初に書いたとおり、この結論には、やや三戸の丘贔屓な視点が入っているのです。

 例えば、最終ラウンドで考察した見開きの場合、「ページ右中央付近の岬」と「初瀬野邸のある丘」の距離は、思いのほか近い… という考察をあえて飛ばしています。

 見開きの右端、中央付近をご覧ください。
 半ば水没した電信柱(一部は完全に倒壊しているようです)の1本1本の間隔から2つの丘の距離を推定すると、せいぜい500メートル。
 これは、現実の黒崎の丘 〜 三戸の丘の距離800メートルからするとちょっと少なく、「三戸の丘 = カフェアルファ」の際のネックになっています。

 また三戸は、波打ち際から結構すぐに標高が7〜8メートルほど上がります。
 水中の灰色の影が三戸海岸だとすると、町のかなりの範囲が水没する必要があり、その点でも無理があります。


 がこの考察で示したかった事柄の1つに、『既存の考察を疑う』というものがあります。
 「ヨコハマ〜」のような、作者があえて細部をボカした作品を読み解くとき、己を含むファンとの意見交換の間で『作者さんの意図も含めた、世界を読み解こうと挑戦しつづける姿勢』こそが、作品に生きた空気を吹き込む要素と考えます。


 昨今の「ヨコハマ〜」ファンの中に、その姿勢はあるでしょうか?

 かつて辿り着いた結論をもらさず丸暗記することに明け暮れ、そこに矛盾があったとしても否定意見を受け付けられない姿は、開拓精神を失った日本人中年サラリーマンのそれに典型的に見られる、脳の硬化・青春への過剰の美化で呆気なく説明のつく問題ですが…

 それは、「ヨコハマ〜」世界を提供した作者芦奈野ひとし先生自身にとっても寂しい現状であり、彼が目指したファン像と異なるもののように僕は感じられるのです。


 ファンであるあなたたちの考察は、もう終わりですか?

 「ヨコハマ〜」の世界は、ただの青春の思い出ですか?



 年月を経て成長した今こそ、かつてより増した知識で、「ヨコハマ〜」のコミックスを開き、そこに描かれた世界の空気を読みとる旅に出てみてほしい。
 そこには、若さゆえに美化しすぎ、そのために読み違ったという、痛烈な現実との直面が待っているかも知れません。
 実は自分が作品に求めていたものが、作者さん自身が描いていたものとは似ても似つかなかった事実に気づき、蒼白になるかもしれない。

 しかしそれは、あなたが年月を経て成長した果てに
真実を読み解く目を手にいれた証拠です。


 日の小説版発行の直後からネットにあふれた感想文を読んで、今の「ヨコハマ」ファンがいかに思い出の中で硬化しているかを、僕は実感させられました。
 そのテキストの大半から、僕自身の「ヨコハマ」との付き合い方からはすでに遠く離れた、老人の臭いを感じました。

 それは、かつては不景気と呼ばれつつ、すでにそれが当たり前となってしまった困難な日本社会の中で硬くなってしまった、ファンの心の現われかもしれない。
 が、それにしがみついているからこそ、困難な「今」から脱出できない… という逆説も真ではないでしょうか?



カフェアルファ建設の地は『三戸の丘』です。


 この結果に異論のある方は、その目で、その足で、ネットで…
情報をかき集めて、僕に反論してほしい。

 その、誰よりも真実を読み解きたい! と燃える思いが胸に湧いたとき、
「ヨコハマ」が見せたかった本当の風景が、あなたには見えるかもしれません。


                                   (執筆 2008/11/05)






★追加情報です



2010年1月末日。

横須賀市にお住まいのHさんより、
非常に重要な追加情報をいただきました!


Hさんは海上自衛隊にお勤めで、
お仕事の一環で海図を読まれることもおありなのだそうですが…

その海図上における三戸の丘の名称が、なんと、
『西ノ埼 (にしのさき)』 というのだそうです!


Hさんご自身も「ご参考までに」と念を押されており、
僕も『やっぱり三戸の丘は、西の岬なのだ!!』
一挙に燃え上がるほど浅はかではありませんが、
体温が1度ほど上昇しました(笑)



それと気づいて、ネットで調べてみたところ…

初声町近辺の海辺の、とても心地よい写真を撮っておられる、
ブログ『From Hasse 2』にて、
2009/5/15 に同様の話題が出ておりました!

うれしいやら、心強いやら。





…そうそう。 これに気を良くして言うわけではありませんが、
4巻・第30話 『カフェアルファ』にも、ちょっと気になる表記を見つけました。

カフェアルファに訪れたお客さんの一人称視点で語られる、
あの不思議な話です。


場所は、94ページ

『もともと この道は 先のほうにあった
別荘街のために つくられたらしい』


という、カフェを目指すお客さんの言葉です。



実は、これを黒崎に当てはめると、
ちょっとおかしな点が出てくるのです。

というのも、黒崎のあの広々とした畑の敷地は、
元々『黒崎飛行場』建設予定地としての土地であり、そのためあのような、
三浦ではありえないほど整然とした区画になっているのです。

つまり、現在黒崎につけられている道も、
そうした目的のために用意された道といえます。



これに、ミリタリーに関して時にマニアックな遊び心を作品に盛り込む、
しかも地元の芦奈野先生が、気がつかないものでしょうか?


そんなはずはありません。

わざわざ「別荘地のために」と書いている以上、
芦奈野先生にとって「西の岬」は、
最初から「別荘街」としての意味合いしか持たない場所…


つまり、黒崎以外の、
例えば『三戸の丘』などである可能性が、
高くなってくるのです。



『西の岬問題』(笑)はまだまだ決着しませんが、
こうしたさまざまな要素を検討して作品の隠された「何か」を
探っていくのは、本当に楽しいですね。

僕も、どこまでも食いついて追いかけていく所存です(笑)



(執筆 2010/02/03)




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