■ アルファさんは、空を飛ぶ





 『アルファさんは、空を飛ぶ』


そんな、『このジョルノ・ジョバァーナには夢がある』
みたいなこと言われても困るとは存じますが、
「言われてみれば飛んでたよな、アルファさん…」と
懐かしく感じられる方も多いのではないでしょうか?

なんだったんでしょうね? あの、「飛ぶアルファさん」


心理分析によると、飛行する夢は、
性的高揚性的欲求に関係するとかどうとか… ぐひひひ
と、お約束のボケをさらりと流し、
考察してみました、空飛ぶアルファさん

インパクトがあったのでよく憶えている割には、
関連話数が、140話中たった3つ(厳密には4つ?)
だったのには仰天しましたが。


終わってみれば、この、アルファさんが飛んだ事実が
「ヨコハマ〜」の… 正確にはA7M2に関する
重大な謎解きに直結していたとは、我ながら意外でした。


それではお読みいただきましょう、考察『アルファさんは、空を飛ぶ』

貴方は今宵、歴史の証人となる!(以前も言った)






まずは、関連エピソード1つ1つについての考察です。
対象は、以下のたった3つ。


    6巻・ 52話 『NIGHT BIRD』
    7巻・ 55話 『中空の白』
   13巻・125話 『顔にあたる空気』



パソコンの前の貴方も、今すぐ 6・7・13巻を用意して、
できればお気に入りの飲み物もご用意ください。

そして… ご覚悟ください





■ 52話 『NIGHT BIRD』

  


 ココネに勧められたコーヒーのお酒。 ミルク割りのおいしさに暴飲(笑)が過ぎて、例のシビレ状態に陥ったアルファさん…

 ふと気づくと、優雅に夜空を飛行していました。

 彼女曰く、『ああ… これいつもの夢だ−』だそうで、今までもたびたび(おそらく睡眠時に)同様の経験をしていたようです。

 ひとしきり空中遊泳した後、目を覚ますと、おじさんのガソリンスタンドと思しき敷地で、国産大豆の袋を掛け布団にくるまった薄汚い自分が…
 「お酒も牛乳もまだまだダメか…」と、自己嫌悪のアルファさんの感想で物語の幕は下ります。


 この話は一見すると「酔っ払いの夢」なのですが、アルファさん自身が『以前から同様の夢を繰りかえし見ていた』事実が、今後の伏線的意味を持つ重要な話でもあります。





■ 55話 『中空の白』

  


 52話の比較的すぐ後に書かれており、作者さんの中でもこの時期に「空を飛ぶアルファさん」の構想(自他共に)固めたかったのではないか? と推察されます。

 今度は冬の昼間の空ですが、前回同様、自由に空を飛びまわるアルファさんは、地上を歩くタカヒロを目撃します。 しばらくしてフッと目がさめて、気づけば自宅でうたた寝をしていたようです。

 後日タカヒロから聞かされたのは、「このへんで白いものがスー…」という話。
 アルファさんは怪談話と思い込んで悲鳴をあげますが、前後のつながりから、タカヒロが『空中飛行していたアルファさんを「白いもの」として目視していた』と考えるのは当然の流れではないでしょうか?


 さて、52話と55話を合わせて考えると、以下の事実が見えてきます。

 ・飛行中に見える景色はリアルタイム

 ・飛行中のアルファさんは、第三者にも見える

 ・飛行中の形状が実際のアルファさんの姿とは異なるので、
  「本人の身体」が実際に飛んでいるわけでは必ずしも無さそう



 つまり、52話までは「単なる夢」で片付けることも可能だったものが、タカヒロの目撃談によってリアルタイムで起こっている何かの可能性を帯びてきたわけです。





■ 125話 『顔にあたる空気』

  


 思わせぶりな伏線しいといて、5年以上もほったらかしにするんだからモ〜、芦奈野さんのイ・ケ・ズ(殺人的にキモイ

 冗談はアレとして、5年を経て唐突に『アルファさん空中飛行問題』に、まるまる1話が費やされる事となります。

 今回のアルファさんは眠ってはいません。
 エンジンをかけたままの愛用のバイクに腰かけて、何となくボンヤリと時をすごす… そんな時、「気の持ちようにもよる」らしいが、『目の前の景色の中を飛ぶことができる』そうです。

 皆さんにも憶えがあると思うのですが、付近の土地の形状を把握して脳内で構築し、その中を自由な視点で(想像の範疇で)飛びまわる思考遊び… 大人になっても時々やっていませんか? 僕はやります(笑)

 アルファさん自身も、そんな思考遊びを楽しんでいるつもりだったようですが…
 すぐ眼下の、エンジンかけっぱなしの自分のバイクを見おろしたとき、「目の前の確かな対象に 少しあせった」そうです。

 そして最後のコマで一言…
『別に誰にも言わないけど 私は けっこうよく空を飛んでいる』
 この話もまた、「空飛ぶアルファさん」の1つであった事に気づかされます。

 特筆すべきは、眠っていなくても空を飛べるようになっている点と…
 52話・55話で共通していた「飛行中の形状が実際のアルファさんの姿とは異なる」を押し進め、今では自在に形状と速度を変えられるまでになっている点です。







ここで話を未来に移し、14巻・139話 『夕凪通信』を思い出してください。


外歩きをしているアルファさんは、目をつぶったまま
ガードレールの上でバランスを取りつつ歩いていきます。

口には、例のケーブルを咥えていません。

これは、アルファさん自身が成長…
正確には自分に元々備わっていたスペックに慣れて、
ワイヤレスでもカメラからの画像データを受信できるようになった
と見ることができます。


これを先ほどの空中飛行に照らして考えると、
アルファさんは元々、空を飛ぶ能力…
正確には『自分の視点を自在に操る能力』を
持っていたのではないでしょうか?



しかしそのためには、先述のとおり、
『付近の土地の形状を把握して脳内で構築』
する必要があります。

彼女はどこでそれを成していたのでしょう。

何度も訪れているうちに自然と…
という意見もその通りだと思いますが、
実は彼女自身は脳内で構築していなかった
と考えてみればどうでしょう?


つまり、
『彼女に代わって地形をデータベース化している存在があった』
と考えるのです。





…もうお分かりですね。

そうです、ターポン です。


元々、地上の動植物のDNAバンクであり、
滅びゆく地上の様々なデータベース化を目的として
航行していると考えられるターポンには、
地表の形状などのデータがリアルタイムに蓄積されていました。

アルファさんは、知らず知らずのうちに
それをワイヤレスに読み取れるように
ゆっくりと成長していた
のです。



その視点で見たとき、
139話クライマックスシーンさらなる意味が加わります。


カメラを勢いよく回転させて真上に投げ上げ、
まるで中空から見おろすような視点(P130)は、
もちろん、カメラからの映像であり、
その瞬間のアルファさん自身の視点でもあります。


では、P132 の見開きはなんでしょう?

投げ上げたカメラからとは思えない高度からの、この視点…



ただの漫画的表現(ロング視点)と思いがちですが、
これを『ターポン』から引き出した空間データを
再生したもの
と考えたとき…

この139話は、ある意味
『空飛ぶアルファさん』の総決算的話
と見ることができるのです。



成長したからこそ、カメラ映像を、
インターフェース無しで自在に受信できるようになったアルファさん。


成長したからこそ、ターポンのデータベースを、
覚醒時であっても自在に受信できるようになったアルファさん。




空を往くA7M1記す者なら、地で生きるA7M2読み伝える者



沈みゆく地表に、もし生存の奇跡が訪れたとき…

ターポンの蓄えた膨大な知識を受け継ぐ端末として、
一縷(いちる)の希望を託されたのが、3体のA7M2だった。

  




「空飛ぶアルファさん」は、そんな開発者の切実な、
しかしあまりに か細い希望を生まれながらに背負わされた彼女を語る、
作者芦奈野先生壮大な謎かけであったと、今の僕には理解できるのです…







■ さいごに


「未来の生命に、もし再び、地上で生きることが許されたなら…」

空飛ぶアルファさんが見せたのは、
A7M2たちに課せられた人類の希望でした。






 …いや、分かってます。 この説は穴だらけです(笑)

 でも僕としては、前々からズーーッと疑問に抱いていた「アルファさん飛行問題」に、このあたりでどうしても1つの決着をつけておきたかったのです。
 だから上記の説は、あくまで中間点。 以降のヨコハマファン(僕含む)がいつの日か真実に至るための、としてほしいのです。



 ちなみに、1人のヨコハマファンである以上、上記の説の反論者は「僕自身」であっても良いわけです。 というわけで、以下で自分自身の説に対して真っ向から反論してみようと思います。 ←思うなよ


▲タカヒロが目撃した以上、アルファさんは「実際に飛んでいた」とも考えられる。
これは、「単にターポンからデータベースを読み取っていた」だけの行為からすれば全く不要なアクションであり、当仮説の穴といえる。

▲この仮説によれば、ターポンは、アルファさんのバイクのような極細なもの(地球視点で)までリアルタイムに記録していた事になる。 その必要性が疑問であるにも関わらず、当説はそれに関する裏づけを持たない

▲125話におけるアルファさんの、「スクーターと私は道端に立つ同じようなものに思えてくる」というセリフは、「黒潮に去っていった水上艇」「ナイの飛行機」の時に彼女が体験した、異様なほど高いシンクロ性の延長とも考えられる。
当説はその点に触れておらず、仮説として不充分といえる。

▲125話で、空中のアルファさんはバイクだけしか見ていないのに、139話ではアルファさん本人まで見えてるじゃん




 遠慮なく痛いところを突いてきますね、自分自身のくせに(笑)


 皆さんも、今回の説を超えるような仮説をどんどん考案していってくださいね。
そして、僕にバンバン反論してください。 もちろん、代案を伴った反論を。

 真に「ヨコハマ〜」を愛する貴方からのご意見を、いつでもお待ちしています。


                                   (執筆 2009/01/23)





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