まずは、大ざっぱな場所の「あたり」をつけましょう。 アルファさんは、75話で 日野 の野火を見て、 76話で 南へ向かう直線の道 を使っていることから、 おそらくは 国道467号 を 南下してきたのだと思います。 だとすれば、最初に到着した海辺は、現代の 藤沢市… 現在の、JR藤沢駅 のあるあたりではないでしょうか? また、直後の78話で、アルファさんが カフェアルファ近辺まで戻ってきていることから、 すでに三浦半島内に入っている可能性もありえます。 以上から、 『藤沢駅 〜 七里ヶ浜 〜 三浦半島の西海岸のほとんど』 が、海の道のモデルである可能性を秘めている わけです。 ![]() |
「ここまでくれば、あとは似たような地形を探せばOKじゃん!」 「アルファさんの背後に、 やや標高のある岬のような地形も見えているから、 これもヒントになるだろう?」 …と考えがちですが、実はここからが難しくなります。 というのも、三浦半島に詳しい方なら すぐにピンと来ると思うのですが、 三浦半島の西海岸は、 岬状の地形だらけ なのです。 しかも、漫画の中で描かれているのは、夕凪時代の風景。 当然、現在はなだらかな海岸になっているところも水没し、 付近の丘が「岬のように」変貌しているケースも多々出てくるのです。 つまり、第77話の最初のコマで アルファさんが見下ろしている海面も、 現在は普通ーに「街」である可能性もありうるわけですね。 この旅に出たときに、 アルファさんが最初に立ち寄った鎌倉市街も、 ほぼ完全に水没して湾になっていたのは、ご存知の通りです。 というわけで以下では、上記の情報を念頭に、 可能性のあるポイントを北から順に、 1つ1つ写真を交えて吟味していきましょう。 |
■『極楽寺の丘から、北を望む』 まずは、 『鎌倉の西にある極楽寺の丘から、 北の源氏山公園のほうを見た』 ケースです。 以下が、その写真です。 ![]() (中央より、やや左に見えている丘が、それです) ![]() いきなり、かなり漫画内の風景に似た光景が広がってくれて うれしくなりますね。 海面に並ぶ外灯の列が、現在の鎌倉の湾(由比ヶ浜)ぞいの 国道134号のそれと似ているところもポイント高いです。 「よっしゃ、よっしゃ。 海の道のモデル地、これにて確定〜!」 と行きたいところですが、 実はいくつか腑に落ちないところがあるのです。 1つは、彼方の丘の輪郭です。 よーく見ると、漫画内の丘と、 ちょっと形状が異なるんですよね… ![]() (これは、先ほどの場所より、もう少し鎌倉側に 降りたところから撮影した写真です) よく似ているとは思うのですが、漫画内のように 「左に行くほど標高が増している」形状ではありません… さらに気になるのは、 漫画内で、岬の先端近辺に描かれている、 「2つの大きな建物」が見当たらない点です。 サイト『海風通信』の coconeさんの言葉に、 「(芦奈野作品では)さりげなく描かれたものにこそ事実がある」 というものがありますが、 「ヨコハマ〜」の作品内で、 小さいながらもキッチリと描写されている建造物は、 「モデルが実在する」確率が高いのです。 逆に言えば、 作品内で描写されている建物に該当する建造物が、 パッと見に見当たらないこの風景は、 残念ながら、求める場所である可能性は低い… と言わざるを得ないのです。 |
■『逗子海岸の北の丘から、南を望む』 次なるポイント(岬状の地形)は、 『逗子海岸の北、大崎公園ののっている丘あたりから見た、 逗子海岸の南の、葉山マリーナ近辺の丘』 です。 (ここで、この近辺の地理に詳しい人は、 「あれ?」と思われたことと思いますが、 取りあえずそのまま読み進めてくださいね。) 下が、逗子海岸から見た、南の丘の写真です。 ![]() まず驚くのが、丘の形状です。 漫画内のそれと、「先端」がかなり似ているのです。 ![]() さらに、丘の麓には、漫画内と同様に、 いくつかのビルが見えています。 すぐそばには、海沿いに国道134号が通っているので、 半ば水没したままズラリと並んだ外灯 とも整合が取れます。 とどめに、この近辺には広い敷地を持つ施設が点在しています。 その敷地内には、コンクリを敷き詰めた駐車場のようなスペースも多く… それはつまり、アルファさんが9巻・10ページで大波をかぶった 海沿いのコンクリ広場とも一致するわけです。 凄いじゃん! もうここに確定! ![]() …と言いたいところなのですが、 実は 非常に困った矛盾点 が、この場所にはあるのです。 下のコマをご覧ください。 これは、冒頭よりもう少し岬に近づいたシーンらしいのですが… ![]() お分かりでしょうか? 岬の後ろ(右側)に、距離は不明ですが、 もう1つ岬が見えていますね? ところが、この 逗子海岸の南の丘 の裏(南)には、 葉山マリーナをはじめとする海岸線が しばらくなだらかに続くばかりで… 漫画内のような岬など、無いのです。 正確には、無いわけではなく、 山のようなものがあるにはあるのですが、 その形状は、江戸時代ぐらいの日本人が 遠出の際にかぶる笠のような「ゆるい円錐の地形」で… とても、漫画内のそれと同一とは思えない のです。 ![]() (この写真の、中央右に広がるのが「葉山マリーナ」。 その左に見えているのが、件の山です。 漫画内の丘に比べて、ちょっとトンガリすぎですよね) ちなみに、写真だと分かりづらいですが、 今回の候補となった「逗子海岸の北の丘」は、 この山の中ほどに見えている、 高さが山の半分ほどの高さしかない黒い影です。 それと気がついてから、 最初のほうの1枚目の写真をよくよく見直してみると、 手前の丘は写真の中央あたりまでしかなく、 そこから左は、実は背後の山が重なって見えていただけ だという事実に気づいて、愕然とさせられますね。 そもそもアルファさんは、この波打ち際に至る前に、 「海の道のついた斜面」を降りてきたようですが… ![]() 逗子海岸の海岸ぞいの国道134号の近辺から南を向いたとき、 その右側(北東)に、斜面などありません。 海岸の北東に位置する京急『新逗子』駅までの道を中心とした、 付近の縦横それぞれ1キロの範囲は、そのほとんどが閑静な住宅地… 見事なまでの 平地つづきなのです。 というわけで、残念ながら、 ここも候補から外さざるを得なくなりました。 |
■『逗子海岸の北の丘から、南を望む』 さらに南下すると、 見えてきたのは 『大峰山』 です。 ![]() (写真の中央、やや上。 最も奥の山です) 実はこの山、僕にとっては、 初めて三浦半島を体験した1997年に たまたま見つけて登った、思い出深い場所だったりします。 ここがヨコハマ名所の1つだとしたら、うれしいな〜。 形状的にも、けっこう似ていると思います。 ただ残念ながら、ここも漫画内の風景と比較したとき、 先述の「逗子海岸の北の丘」と同様の矛盾点が 問題になってしまいます。 そう。 背後に、別の岬が見えていない んですよね。 ちなみに、この写真で、大峰山の右側に見えているのは、 丘や岬ではなく、葉山一色の海辺の埋立地(?)に作られた住宅街です。 残念ながら、思い出の地 『大峰山』 はここで敗退です。 来年こそは頑張ってほしいです(何を?) ![]() (この写真は、大峰山から見た、「江ノ島〜鎌倉」一帯の海岸線です。 視界は広くないですが、木々が多い、良い場所ですよ? 大峰山。) |
■『大峰山から、南を望む』 こうなったら、どんどん南下しましょう。(やけくそ気味) 大峰山の斜面から、南へと視線を移すと… 目に入ったのは、『大崩の丘』 。 「北の大崩れ」こと『長者ヶ崎』の土台となっている 大崩の町に鎮座まします、急斜面の丘です。 ![]() (写真は、葉山一色の海辺の住宅街の、石の浜辺からのものです) が… この丘もまた、背後に別の丘を背負ってない。 とほほ、ブルータス。 汝もまた。 ブルータス、敗退です。 (大崩の丘 だろ) |
■『大崩の丘から、南を望む』 三浦半島 西海岸の南下ツアーも、 いよいよラストとなりました。 (いつの間にツアーに?) 大崩の丘の斜面から南を眺めると、 あれに見ゆるは、『あゴー! の道』… その先には、海岸の大岩 立石… そして、そのそばには、 岬を思わせる 『秋谷の町の丘』 が。 ![]() まず、丘のそばの建物については申し分ありません。 立石は観光地なので、近辺にホテルもたくさん建っているのです。 問題は、岬の形ですね。 ちょっと丸すぎる気がします… また、漫画内で描かれている、 「岬の奥の、もう1つの岬・丘」に該当する背後の土地も、 あるにはあるのですが、やや低すぎる気がします。 加えて、この近辺一帯は、 道路から東はすぐに丘になっている場所が 連続している箇所で… 海の道がついた丘から降りてきたアルファさんが歩けるような、 広めのコンクリ敷地は見当たりません。 うむー、せっかくここまで南下してきましたが、 残念ながら ここも候補から外れてしまいました… |