■ 鷹取山
神奈川県 横須賀市 湘南鷹取
【最寄】 バス停 『 たかとり小学校 』
『湘南たかとりセンター』
撮影 2007/12/17




 タカ山 のモデルとなった 鷹取山 は、横須賀市 の北西の端、逗子市 の境界近くにある山です。

 山自体の大部分が岩の塊のようになっているそうで、途中まではごく普通の木々におおわれた柔らかい外見なのに、山頂付近に角ばった巨大な岩石の壁が天に向かってそそり立つ、何とも不思議な光景を見せてくれる場所です。



 「ふーん、漫画内でそんな場所も出てたんだ…」と思われたあなた。

 ごめんなさい。 ここは、『ポストカード・ブック』夕凪マップ の中だけに登場した場所なのです。


 当初、マップ内で 『タカ山』 と表記されたこの場所に該当する山が分からず、困りました。 同マップで 大楠山「Mt. Kusu」(クス山) になっている事からも、21世紀とは山の名前が異なっている事は予想できたのですが、「大タカ山」やらそんな感じの山は存在しません。

 他の地名との相対位置から、だいたいの場所は分かるのですが、そのあたりを ゼンリン電子地図 で見てみても、『神武寺』 というお寺があるだけ…



 困り果てて、ふと、三浦半島にお住いの知人である ちーそんさん に相談してみたところ…

 『鷹取山のことじゃないですか?』 と、衝撃的な回答を得ました。



 鷹取山!!


 言われてみれば、横須賀の名所の1つにそんな名前の山がありました。

 「いつか行ってみたいな」と思いつつ、半島中腹部にあることも手伝って後回しにしていた「鷹取山」。 まさか、こんな所で その名に再会する事になるとは!

 こんな場所にあったというのも意外でした。



 言い訳をするなら、この山、ゼンリン地図(電子地図帳Z5)ではなぜか、山を示す三角マークも、隣接する 『鷹取山公園』 の名前も表示されないのです。

 『北の町の公園』 の時もそうだったのですが、どうもこの地図、地元の「無料の公園施設」などに関して、ちょっと弱いように思えます。



 それにしても、「さすがは地元にお住いの方」 と唸らざるをえません…

 ちーそんさん、本当にありがとうございました。






 さて、まずはいきなり、アクセス方法から入りましょう。


 京急『追浜』 で降りて、南西にある小山を目指す事になります。

 駅の北にある 雷神社前 交差点 を西へ左折して、グルリと鷹取2丁目あたりを経由して徒歩で向かった場合、2キロちょっとで到着します。



 金銭的余裕(笑)があれば、バスによる南周りのルートがお勧めです。

(この近辺は、「三浦半島1DAYきっぷ」 のバス乗車フリー区間ではないため、片道200円ちょっとの料金がかかってしまうのです)

 徒歩よりも少し距離は長くなりますが大差はなく、ゆるい坂道をバスでゴトゴトと登っていくのは楽しいものです。

 現地に向かうバスには、「追1・2」系統の2つがありますが、いずれも2つ目のトンネルを抜けた直後のバス停で下りてください。

 バス停は、系統によって 『たかとり小学校』『湘南たかとりセンター』 のいずれかになります。 後者で下りた場合は、鷹取小学校 まで西へ100メートルほど戻ってください。


 学校の北側のゆるい坂道を登っていくと、前方(西)の丘の斜面に、上へと登っていける道が見えるはず。 あれが、鷹取山へと登る坂道です。










 小学校から、家々の間をさらに北へ200メートルほど進むと、コンクリの階段が見えてきます。

 そして、『鷹取山公園』 の看板が… て、おいおい、ハシゴがじゃまですよ。



 公園へと続く坂の途中に、右の林の中に進める小道があります。

 入ってみると、ほどなく岩壁が掘りぬかれて、その壁には仏の姿が…
このような物は、磨崖仏と呼ぶそうです。

 よく見るとすごくハンドメイドな感じの仏さまたちですが(笑)、こういうのが好きな人たちが最近(といっても、ここ50年ほどの間に)掘ったものなのでしょう。








 山頂広場に到着です。

 自販機に、比較的きれいなトイレもあり、広場の端からは北東に広がる町並を一望できます。 夜景なども楽しめるのではないでしょうか?



 ちょっと残念なのがトイレ。

 たしかにきれいなのですが、男女のしきりが少なく、外からも見えやすいイヤな配置です。

 常々思っているのですが、公園などのトイレって、どうしてこう「使用者への配慮が欠けている」のでしょうね?

 お役所仕事、てやつ?













 この付近は岩を切り取るための場所だったらしく、巨大な岩の壁が幾何学的に切り取られた表面をさらし、ダンジョンのような構成を成している、何ともいえず不思議な光景が随所で見られます。

 外国の遺跡をすら思わせます。


 その割に、異世界的な雰囲気が少ないのは、本来ツルツルであるべき岩の表面に、直径2〜3センチほどの穴が無数にあいて、遠目に「自然のままの岩」ぽく見えるせいかもしれません。

 この穴の正体は、ハーケンの跡。
実はこの場所、今でも指導員がいればロッククライミングができるそうなのです。



 ちなみに、ちょっと奥まった所まで進むと、左下の写真のような、高さ7〜8メートルにも及ぶ磨崖仏が…

 すみません、ここは本当に日本ですか?












 鷹取山の一番高い場所には、展望台も設置されています。

 岩の山頂のさらに上に位置するので、登り道のある北以外は、驚くほど視界がクリアです。 特に 東側は絶壁なので、足元がスッパリ無くなって見える景色は怖いほど壮観です。


 写真を撮りに行った日は、朝から空気中の湿度が高く、風景が白っぽくなってしまっていたのが残念です。

 大きな犬をつれて散歩に来ていた地元の奥さんが、「普段はもっと良く見えるんですけどねぇ…」 とおっしゃってました。



 写真は、一番上が西の風景。

 富士山 と、鉄塔の裏に 江ノ島 が写っているのですが、お分かりになりますでしょうか?


 次の2枚は、南西 から にかけて。

 横浜横須賀道路逗葉新道 の分岐点の辺りのようです。








 そして、の風景…

 足元が切り立っているため、この展望台の中でも最もダイナミックな光景です。

 下の地面に立っている人のサイズからも、その迫力がお分かりになるのではないでしょうか?



 空気さえすんでいれば、さらにすごい光景が見れたはず。

 いつかまた撮りなおしに来ようと思います。








 最後は、北東の景色を。

 下のほうに見えている学校は、『鷹取小学校』

 鷹取山は、この小学校にグルリと隣接している山なので、どこにいても、足元のほうから子供たちの元気な声が立ち上ってくる、そんな場所です。



 そして、ズーッと彼方。 海のそばの工場敷地内の真ん中に、取り残されたように座っているあの小山は…

 そう、夏島 です。 こうして見ると、本当に「島」ですね。










 ちなみに、この展望台のある広場の端からは、『神武寺』 に行ける細道が山中へと続いています。

 ややアップダウンがあり、たまに風景も開けるので、なかなかに楽しい山道です。

「鷹取山」を訪れたら、ぜひこの山道もお試しください。



 『神武寺』から北へと山を下ると、京急『神武寺』 にたどりつけるそうです。

 僕はウッカリ逆側の麓に降りてしまったので、未確認ですが…(泣)








 ところで、この山道なのですが…

 実は1つ、ちょっとさびしい思い出があります。

(以下、「ヨコハマ〜」 には無関係で、ダラダラと長い話なのですが、よろしければお読みください)



 写真を撮りに出かけたこの日、山中で1人のおじいさんと出会いました。

 僕と同様に、途中の分岐で迷っていたところを見ると、やはり別の土地から登山に来ていた方だと思います。

 2人とも同じように分岐を間違えて、「ありゃ? 行き止まりですかな?」 「そのようですね…」 と会話したのが、そのおじいさんとの出会いでした。


 その後はそれぞれのペースで進んでいくのですが、写真を撮りながら進む僕と、山道がちょっと困難なおじいさんなので、結果的に進む速度がほとんど同じになり、何度も顔を合わせることに…



 そんな道中に現れたのが、あの「道標」でした。

 左の写真を見てもらえば分かると思いますが、元々あったものに、後から来た誰かが 余計な親切心 を起こして、追記をしてしまったようなのです。


 この日、朝から体調を崩してイライラしており、後にいくつも周るべきポイントを控えていた僕にとって(しかも予定を大幅にオーバーしていた)、この道標の追記の見づらさと誤解を招きやすい表記は憤怒モノでした。

 が、どうやらに行けば神武寺にたどり着けることが分かり、そちらに向けて走り出したとき… 右下のほうから、ガサリガサリと枯葉を踏みしめつつ遠ざかる足音が耳に入りました。

 たしかににも道は続いていますが、その先にあるという逗子高校通行不可と、元々あった道標に書かれていたはず。

 後姿からすると、下っていったのは、さっきのおじいさん


 一瞬声をかけようと思いましたが、すでに50メートルほど先を進んでおり、今後の予定を考えると、こちらもノンビリしていられない…

 そもそも初めて来た場所で、僕自身がそれぞれの道の先を全く把握していないわけで、もしかしたらあの先におじいさんが目指す場所があるのかもしれません。

 「素人の口出しは迷惑だよな…」。 そう思って進み始めたのですが…


 数100メートルほど進んで、そろそろ神武寺が近づいて来たころ、道標の「通行不可」という文字がどうにも頭にチラついて離れなくなりました。

 そして今までの記憶から、やっぱりどう考えても 「おじいさんは、ここに来たのは初めて」 であり、だとしたら、あちらのルートを使う理由が見当たらない…

 間違って進んだとしか考えられないのです。



 麓まで降りて本当に「通行不可」だったとき、あのおじいさんの体力で戻ってこれるのか? やはり連れ戻したほうが良いのでは? しかし、こちらの体調もそろそろ少し危ないので、先に進みたい。 さっき、公園の自販機のスポーツドリンクが売り切れていたのを「まぁいいだろう」と軽く考えて歩いて来たせいで、のどがパサパサ。 岩の割れ目にたまって緑色になってしまっている腐り水すらおいしそうに見えるほどの今の自分に、余計な遠回りをするだけの体力はあるのか?
 だいたい、じいさんだよ、じいさん。 女の子でもなんでも無ぇ。 手助けに行っても見返りゼロじゃんゼロ。

と、一瞬色々な思いが交差しましたが…


 結局のところ、『あの時、声をかけていれば良かったのだ』 と気づきました。

 その判断を誤ったから、今こうして煩悶しているのです。



 というわけで、おじいさんを追って右の道を下っていく事にしました。

 おじいさんのためではなく、自分の過ちに決着をつけたかった…
そんな心境だったのだと思います。



 入ってみると、実に分かりにくい道でした。 本来の道が枯葉に埋もれているので、見る角度によっては道だと分からないことがあるのです。

 しかも、その先でさらに何度か分岐している…

 これは、あのおじいさんにはキツすぎだろ?と、先に進むにつれて徐々に不安になってきました。 もちろん自分自身の体力についてもですが、おじいさんがどこかで転落しているのではないか? と、イヤな想像が浮かんだりしました。


 ふと、地面の新しい足跡を確認すれば、おじいさんがここを通ったかどうかが分かるのでは? と気づきましたが、振り返ると、枯葉がクッションになって自分の足跡すら残っていません。

 これでは、より体重の軽いおじいさんの足跡など残るはずがない…
あきらめて、とにかく追いかけることにしました。



 結局、高さ100メートルほどの山を15分ほどで駆け下り、「逗子高校」の敷地(通行不可)に入る小さな橋まで来ましたが… おじいさんには会えませんでした。

 つまり、おじいさんは、途中の分岐から別の道に進んだようなのです。

 乾いたノドがはりついて、ちょっと泣けてきましたが、しびれはじめた足を引きずって、また100メートル近い高さを登ります。

 分岐の1つまで戻り、今度は「老人ホーム」があると書かれているルートへ…

 この道も落ち葉のせいで足跡は確認できませんでしたが、途中にクモの巣が残っていたので、その先におじいさんが進んだ可能性は低いと思われ、中断して先ほどの分岐点に戻りました。



…と、ここまで確認したところでギブアップ。

 1つだけ確認しなかった、分岐点の最後の1本のルートは、おそらく先ほどの「複数の磨崖物が掘られていた壁」 につながっている道で、おじいさんはここを進んだのではないかと思います。

 というのも、高校から戻ってここまで来ると、行きに通ってきた道が角度のせいで 「ただの草むら」 にしか見えず、逆にこちらの道が 「行きに通ってきた道」 のように見えるのです。

 行きに通ったときに、「この道は入りが分かりづらいから、帰りに迷うかも…」 と注意していた僕でさえ、ウッカリそちらに曲がりそうになったほどなので、おじいさんが間違ってこちらを進んだとしても無理のない話だと思います。



 こうして、おじいさんを見つけられないまま、モヤモヤした気持ちで「神武寺」へと進みました。

 後日調べたかぎりでは事故なども無かったようなので、おじいさん、ちゃんと公園のほうに戻れたのだ、と思いたい…


 これからは今まで以上に、「気になった瞬間」に行動しよう… と、まだまだ弱い自分の判断力をちょっと悔いている、2008年新春の今の自分です…


 あと、あの道標に追記をした人間を、この手でブン殴ってやりたい… というのが、飾らない今の気持ちです。





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