読者と同じ歩幅で歩いてきた物語は、
この14巻で急速にその速度を上げます。


今まで積み上げてきた様々な要素・登場人物について、
アルファさん視点からの 「最後の思い出」 をつづった巻…
とも言えるでしょう。


最終話で語られる 50年後の三浦半島を、
ぜひ、あなた自身の目でご確認ください。






  第131話    air
 この第14巻は、13巻から一気に時間が経過します。 カフェアルファへの道はさらに草が生い茂り、なじみの風見魚の形も変わりました。

 寒風に舞う枯草の切れ端、乾いた音を立てる木製の装飾品…
見ているだけで、心の中までカサカサになりそうな寂しい風景です。

 11巻13歳だったマッキ「ムサシノ運送」の社員になっていることから、
5〜10年ほど経過しているようです。
 マッキを通じて、シバちゃんマルコの近況もちらほら紹介されます。


 そんな時間の流れを感じさせる話なのに、聞き手のアルファさんの姿だけが以前と変わらない。

 ロボットの人が生活の中にいるということは、こういう事なのだ…
と、そのイビツさが逆に、なんともいえない寂しさをかもし出す話です。



  第132話    見て、歩き、よろこぶ者
 子海石先生が登場する最後の回。
娘同然のアルファさんに、自分のペンダントをあずけます。

 世代から世代に意志が継がれつづける事が、寿命がある人間にとっての唯一の永遠かもしれません。



  第133話    海の衆
 砂浜に泳ぎに来た、アルファさん・ココネ・マッキ・マルコの4人娘。

 泳ぎにかけては、地元三浦勢が圧倒しています。
それを見たマルコ、「人間じゃないね」とポツリ。 あんたが言うか…



  第134話    ラジオ
 少しずつ人が住めなくなっていく地上を、上空のターポンから見つづけるアルファー室長

アルファー室長は、本人曰く、島国(日本)生まれの大陸(中国?)育ちだとか。

 生命の危険の無い、孤独な航路… その旅はいつまで続くのでしょう…



  第135話    CAFE ALPHA
 第4巻・30話の、「読者自身がカフェアルファに訪れる一人称視点の話」の続編です。

 ただし、あれから10年以上経っていますが。

 お客から見たアルファさんを堪能できる話です。
男はいつでも、こういう心の隠れ家を探して生きています。



  第136話    鷹津ココネ
 ココネシバちゃんと過ごす、ある日の仕事中の昼食の話です。

 シバちゃんも歳のせいか(この娘は顔が顔なので変化が分かりませんが)、管理部に転属になるとか。

 それを聞いたココネ、めずらしくビックリ顔を披露します。



  第137話    みんなのふね
 第6巻・45話と同じタイトル… ですが、「船」がひらがなになっていますね。

 いきなりですが、2コマ目のアルファさんはエロスすぎですね。
いや、ただのノビなのは十分承知していますが。

 浜松に働きに出ているタカヒロと、そこに引っ越したマッキが、軽飛行機に乗って『台の原のお社』上空にほんのり里帰りに来ます。


 地元でそれを見上げているのは、今はアルファさんただ1人ですが…

 飛行機にうれしそうに両手を広げて応えているアルファさんが、よけいに物悲しく感じられます。



  第138話    目覚める人
 マッキが、タカヒロとの間に生まれた娘サエッタをつれて、三浦に里帰りする話です。

 そばに生えている草をにぎって崖の斜面に立つサエッタですが、木々に囲まれた湿度の高い三浦の… ましてや『小網代の入江』でこんなことをすると、根っこごと土がボロリと抜けて転落する危険大なので、地元のマッキは指導すべきですね。


 そして、ミサゴと出会うサエッタ。
母のときと同じ、橋のそばで。

 ミサゴ自身は、「昔見かけたけど、最近パッタリ来なくなったアノ子が、久しぶりにやって来た」と思っているのかもしれません。



  第139話    夕凪通信
 オーナーからもらったデジカメを片手に歩くアルファさん。

 よく見ると、口にくわえるインターフェースケーブルを使用せずに、カメラの見ているものが見えているようです。
 デジカメが進歩したのか、アルファさんがそういう事ができるようになったのか…

 やや後者のような気がします。


 そして、空に放り投げたデジカメで自分自身を見下ろしたアルファさんは、オーナーを思い出します。

 オーナーはすでに空の上… という事かもしれません。



  第140話    ヨコハマ買い出し紀行
 第1巻・0話とまったく同じタイトルです。
扉絵に、作者さんの小さなお遊びも。
 あの時から、約50年の月日が経過したようです。

 もちろん、ここで内容を語るようなヤボはしませんので、
皆さん自身の目でご確認ください。


 『人の夜が やすらかな時代でありますように』




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