■ 『海の道』を求めて




今までの現地系ヨコハマファンサイトでも発見に至らなかった…

そして、自分がその初の発見者となるために、
僕が精力的に探し続けたポイントには、

『鎌倉花火の丘』『最後の丘』 などがありますが…


そんな未解明のヨコハマ名所の1つに、『海の道』 があります。



第77話 『塩』 にて、
1年近く三浦半島を離れていたアルファさんが、
実に久しぶりに出会った海辺…

そのそばの、
海から逃げるように上へ上へとつけかえられてきた
道の化石をたずさえた、数10メートルほどの丘



それが、『海の道』 です。







以下は、その丘を数年間にわたって探し続けた、
僕の持てる限りの資料になります。


志ある方に継いでいただければ… と思い、
公表(笑)する事にしました。






まずは、大ざっぱな場所の「あたり」をつけましょう。



アルファさんは、75話で 日野 の野火を見て、
76話で 南へ向かう直線の道 を使っていることから、

おそらくは 国道467号
南下してきたのだと思います。


だとすれば、最初に到着した海辺は、現代の 藤沢市

現在の、JR藤沢 のあるあたりではないでしょうか?




また、直後の78話で、アルファさんが
カフェアルファ近辺まで戻ってきている
ことから、

すでに三浦半島内に入っている可能性もありえます。




以上から、

『藤沢駅 〜 七里ヶ浜 〜 三浦半島の西海岸のほとんど』
が、海の道のモデルである可能性を秘めている
わけです。










「ここまでくれば、あとは似たような地形を探せばOKじゃん!」

「アルファさんの背後に、
やや標高のある岬のような地形も見えているから、
これもヒントになるだろう?」



…と考えがちですが、実はここからが難しくなります


というのも、三浦半島に詳しい方なら
すぐにピンと来ると思うのですが、

三浦半島の西海岸は、

岬状の地形だらけ なのです。




しかも、漫画の中で描かれているのは、夕凪時代の風景。

当然、現在はなだらかな海岸になっているところも水没し、
付近の丘が「岬のように」変貌しているケースも多々出てくる
のです。


つまり、第77話の最初のコマで
アルファさんが見下ろしている海面も、
現在は普通ーに「街」である可能性もありうるわけですね。

この旅に出たときに、
アルファさんが最初に立ち寄った鎌倉市街も、
ほぼ完全に水没して湾になっていたのは、ご存知の通りです。



というわけで以下では、上記の情報を念頭に、
可能性のあるポイントを北から順に、
1つ1つ写真を交えて吟味していきましょう。







■『極楽寺の丘から、北を望む』


まずは、

『鎌倉の西にある極楽寺の丘から、
北の源氏山公園のほうを見た』
ケースです。


以下が、その写真です。



(中央より、やや左に見えている丘が、それです)





いきなり、かなり漫画内の風景に似た光景が広がってくれて
うれしくなりますね。



海面に並ぶ外灯の列が、現在の鎌倉の湾(由比ヶ浜)ぞいの
国道134号のそれと似ているところもポイント高いです。



「よっしゃ、よっしゃ。 海の道のモデル地、これにて確定〜!」


と行きたいところですが、
実はいくつか腑に落ちないところがあるのです。



1つは、彼方の丘の輪郭です。

よーく見ると、漫画内の丘と、
ちょっと形状が異なる
んですよね…




(これは、先ほどの場所より、もう少し鎌倉側に
降りたところから撮影した写真です)



よく似ているとは思うのですが、漫画内のように
「左に行くほど標高が増している」形状ではありません…




さらに気になるのは、

漫画内で、岬の先端近辺に描かれている、
「2つの大きな建物」が見当たらない
点です。


サイト『海風通信』coconeさんの言葉に、
「(芦奈野作品では)さりげなく描かれたものにこそ事実がある」
というものがありますが、

「ヨコハマ〜」の作品内で、
小さいながらもキッチリと描写されている建造物は、
「モデルが実在する」確率が高い
のです。



逆に言えば、

作品内で描写されている建物に該当する建造物が、
パッと見に見当たらないこの風景は、

残念ながら、求める場所である可能性は低い…
と言わざるを得ないのです。






■『逗子海岸の北の丘から、南を望む』


次なるポイント(岬状の地形)は、

『逗子海岸の北、大崎公園ののっている丘あたりから見た、
逗子海岸の南の、葉山マリーナ近辺の丘』
です。

(ここで、この近辺の地理に詳しい人は、
「あれ?」と思われたことと思いますが、
取りあえずそのまま読み進めてくださいね。)




下が、逗子海岸から見た、南の丘の写真です。





まず驚くのが、丘の形状です。

漫画内のそれと、「先端」がかなり似ているのです。







さらに、丘の麓には、漫画内と同様に、
いくつかのビルが見えています。


すぐそばには、海沿いに国道134号が通っているので、
半ば水没したままズラリと並んだ外灯 とも整合が取れます。




とどめに、この近辺には広い敷地を持つ施設が点在しています。

その敷地内には、コンクリを敷き詰めた駐車場のようなスペースも多く…

それはつまり、アルファさんが9巻・10ページで大波をかぶった
海沿いのコンクリ広場とも一致するわけです。


凄いじゃん! もうここに確定!







…と言いたいところなのですが、

実は 非常に困った矛盾点 が、この場所にはあるのです。



下のコマをご覧ください。

これは、冒頭よりもう少し岬に近づいたシーンらしいのですが…





お分かりでしょうか?

岬の後ろ(右側)に、距離は不明ですが、
もう1つ岬が見えていますね?



ところが、この 逗子海岸の南の丘 の裏(南)には、
葉山マリーナをはじめとする海岸線が
しばらくなだらかに続くばかりで…

漫画内のような岬など、無いのです。



正確には、無いわけではなく、
のようなものがあるにはあるのですが、

その形状は、江戸時代ぐらいの日本人が
遠出の際にかぶる笠のような「ゆるい円錐の地形」で…

とても、漫画内のそれと同一とは思えない のです。




(この写真の、中央右に広がるのが「葉山マリーナ」。
その左に見えているのが、件のです。
漫画内の丘に比べて、ちょっとトンガリすぎですよね)




ちなみに、写真だと分かりづらいですが、
今回の候補となった「逗子海岸の北の丘」は、

この山の中ほどに見えている、
高さが山の半分ほどの高さしかない黒い影です。



それと気がついてから、
最初のほうの1枚目の写真をよくよく見直してみると、

手前の丘は写真の中央あたりまでしかなく、
そこから左は、実は背後の山が重なって見えていただけ
だという事実に気づいて、愕然とさせられますね。





そもそもアルファさんは、この波打ち際に至る前に、
「海の道のついた斜面」を降りてきたようですが…





逗子海岸の海岸ぞいの国道134号の近辺から南を向いたとき、
その右側(北東)に、斜面などありません。

海岸の北東に位置する京急『新逗子』までの道を中心とした、
付近の縦横それぞれ1キロの範囲は、そのほとんどが閑静な住宅地…

見事なまでの 平地つづきなのです。



というわけで、残念ながら、
ここも候補から外さざるを得なくなりました。







■『逗子海岸の北の丘から、南を望む』


さらに南下すると、

見えてきたのは 『大峰山』 です。




(写真の中央、やや上。 最も奥の山です)



実はこの山、僕にとっては、
初めて三浦半島を体験した1997年に
たまたま見つけて登った、思い出深い場所
だったりします。


ここがヨコハマ名所の1つだとしたら、うれしいな〜。

形状的にも、けっこう似ていると思います。




ただ残念ながら、ここも漫画内の風景と比較したとき、
先述の「逗子海岸の北の丘」と同様の矛盾点
問題になってしまいます。


そう。 背後に、別の岬が見えていない んですよね。



ちなみに、この写真で、大峰山の右側に見えているのは、
ではなく、葉山一色の海辺の埋立地(?)に作られた住宅街です。




残念ながら、思い出の地 『大峰山』 はここで敗退です。

来年こそは頑張ってほしいです(何を?)




(この写真は、大峰山から見た、「江ノ島〜鎌倉」一帯の海岸線です。
視界は広くないですが、木々が多い、良い場所ですよ? 大峰山。)







■『大峰山から、南を望む』


こうなったら、どんどん南下しましょう。(やけくそ気味)

大峰山の斜面から、南へと視線を移すと…


目に入ったのは、『大崩の丘』

「北の大崩れ」こと『長者ヶ崎』の土台となっている
大崩の町に鎮座まします、急斜面の丘です。




(写真は、葉山一色の海辺の住宅街の、石の浜辺からのものです)



が… この丘もまた、背後に別の丘を背負ってない


とほほ、ブルータス。 汝もまた。


ブルータス、敗退です。
(大崩の丘 だろ)






■『大崩の丘から、南を望む』


三浦半島 西海岸の南下ツアーも、
いよいよラストとなりました。
(いつの間にツアーに?)


大崩の丘の斜面から南を眺めると、
あれに見ゆるは、『あゴー! の道』

その先には、海岸の大岩 立石


そして、そのそばには、
岬を思わせる 『秋谷の町の丘』 が。






まず、丘のそばの建物については申し分ありません。

立石は観光地なので、近辺にホテルもたくさん建っているのです。



問題は、岬の形ですね。

ちょっと丸すぎる気がします…



また、漫画内で描かれている、
「岬の奥の、もう1つの岬・丘」に該当する背後の土地も、
あるにはあるのですが、やや低すぎる気がします。



加えて、この近辺一帯は、
道路から東はすぐに丘になっている場所が
連続している箇所で…

海の道がついた丘から降りてきたアルファさんが歩けるような、
広めのコンクリ敷地は見当たりません。





うむー、せっかくここまで南下してきましたが、
残念ながら ここも候補から外れてしまいました…







「極楽寺の丘」から、鎌倉 〜 逗子 〜 葉山 〜 秋谷 と、
海ぞいを15キロほども旅してきたのに、

ついに確証に足る場所を見つけることができませんでした。 とほほー(泣)


という事で、あとは皆さんで、何とか探し出してみてくださいね。





…と言いたいところですが、「いや、待った!」



最初からキチンと読んでくれていた方は、

そして、三浦の地理に詳しい方は、

僕が途中で1ヵ所、「丘」を飛ばしていた
ことに、気がつかれていたことと思います。



あきらめるのは、その丘を検証してからでも遅くありません。



参りましょう、最後の候補地へ。

鎌倉は材木座海岸の、さらに東…


『逗子マリーナ』の北の、その丘へ!





【『海の道』を求めて (その2)】 に続く