表面的には特別大きな動きが無い、
どちらかといえば まったりとした巻です。


かつての交流、最近の交流、
生まれつつある交流を描いた巻と言えるでしょう。


そして、静かに幕を閉じる交流も…






  第89話    冬の前
 ススキも伸び、風が寒くなってきた西の岬
カフェアルファに、2年ぶりに壁が造られました。

 古材の寄せ集めでも、床だけは最初にシッカリ造るところに、アルファさんの接客姿勢がよく現れています。


 ところで、おじさんを店内に入れるためにドアを開けるアルファさんですが、先に顔を合わせていたとはいえ、彼女が自分からカフェへお客さんを招き入れるのって、これが最初で最後ではないでしょうか?

 逆に、なぜ他の場面では招き入れなかったかというと…

 人生で安息を得るには、自ら(カフェアルファの)「扉」を開く意志が必要
という、芦奈野先生が暗に示したメッセージではありますまいかとか考えるのは分析がうるさすぎですか、ごめんちゃい。



  第90話    冬の中
 アルファさんに、『台の原のお社』で見せたいものがあるので来てほしい…
と誘われたタカヒロ。 やや過剰に期待して向かうも、想像していたものとは違い、ガックリするやら安心するやら。

 寒い中、来訪者を待つアルファさんを、「自分が、前が寒いから…」と後ろからコートで包み込むタカヒロ。

 あの日、幼かった自分に彼女がそうしてくれたように…


 そして、この日飛行機を見たことが、その後のタカヒロの人生に大きな影響を与えていきます。



  第91話    冬のおわり
 温暖化した三浦半島では相当に珍しい、が積もった日のお話です。

 これに限らず「ヨコハマ〜」という漫画には、作者の実体験を基盤にしていると思われる見事な描写が多数見られますが… この話も秀逸です。

 「雪の手ざわり」、「雪道を甘く見て遭難しそうになる」、「雪だるまが丸くならない」、「電線からポクンと外れて落ちる筒状の雪」など、本当に雪というものを体験し気づいていないとできない描写の数々には心底うならされます。



  第92話    マルコ茶
 絵を描く日々のマルコですが、霞を食べて生きれるわけも無く(いや、ロボットだからむしろ画材のために?)、文具・画材店の営業をやっているようです。
 店名は『ニュートロン』(中性子)
仕事の前後で、そんなに表情変えんでも…(笑)

 仕事で三浦半島に来たついでに、以前友人の写真で見たアルファさんを探しに、三浦へと走ります。

 偶然ガソリンスタンドで会ったアルファさんに、自分が彼女を知っていることや、ココネと知合いである事を隠しつつ、素っ気無く対応します。
 彼女にとって、ココネの筆頭の友人であり、ナイの心にも印象を残したアルファさんという女性には、強いライバル心や嫉妬心があったのでしょう。


 もっとも、自分の素性を隠すことでしか相手と気分的に対等になれないマルコの幼児性を見ると、アルファさんとの勝負(もし勝ち負けがあるのなら)は、最初から決していたとしか言えないところがあります。

 それは、後日彼女が、ココネと一緒にカフェアルファを訪れたときに決定的になるのですが…

 「仕事道具」を忘れていくあたり、クールに振舞いつつも、実はけっこう緊張していたのではないでしょうか? マルコ。



  第93話    人の花
 レコード「A2」について、シバちゃんと語るココネ

 シバちゃんの感想に、「脳に… きた?」とうれしそうに尋ねるココネ。
友人が同様の感じ方をしてくれいることがうれしいようですね。

 ところで、ココネの『以前、子海石先生が見せてくれた あの色の組み合わせ 香りのもと』は何を指しているのでしょうか? 前回2人が初対面したとき(9巻・83話)には、レコードを聞いただけだったと思うのですが…?



  第94話    echo
これは、アルファー室長を愛してやまぬ我らのために描かれた話と申せましょう。

 て、偉そうに語ってますがスミマセン。 私、この話でコロリとやられた口です。

 というのも、登場時(4巻・26話)(正確には、4巻中表紙)のアルファー室長は、
顔つきのせいもあってか「バリバリ キャリアウーマン」な強くて固いイメージがあり、個人的に愛らしさを感じない女性だったのです。

 ところが、6巻・44話、7巻・58話と登場回を重ねるにしたがって、「何かを思い出して物思いにふける」ような表情を見せる、落ち着きと、過去の深みを持ったキャラとして描かれるようになり…
 そして、決定打となる今回の話です。


 全裸で水路を泳ぎつつ、透明の外壁から地上を見下ろす、自分の中の深い部分と対話しているような物憂げな表情…

 おばちゃんに見つかって、うろたえつつ水面下に身を沈める恥じらい…

 「降下用のボートさあ… あれ 捨てちゃってみよっか」というおばちゃんに、「いいかも  しれませんね」と応える、達観にも似た良い意味のあきらめを秘めた目…

 濡れてしっとりと垂れた、普段より自然な雰囲気の前髪…



 完璧です。

 男子たるもの、かように素晴らしい女性との出会いにこそ己が人生を賭すべきでありましょう、て本当に個人的な話で申し訳ないです室長最高〜。 以上。



  第95話    
 彼方の夕立雲の中に、走るイナヅマを見つけたアルファさん。
バイクを駆って、とある広場にたどり着きます。

 ポツンと立つ小さな標識を、離れた場所から、オーナーの拳銃で数発狙撃するアルファさん。 全弾命中させるテクニック。
 命中時に飛び散る緑色のイナヅマを見て、物思いにふけります。

 よく見ると、ちゃんとゴミ(薬きょう)も拾っていますね。



  第96話    眠る人
 エンジンのメンテに興味津々のタカヒロを、かたわらで眺めつつ「つまんねえ!」と足蹴にするマッキ

 『小網代の入江』では、草笛の音色に興味をおぼえて遊ぶミサゴの姿が。
しかし、やがて飽きて草笛を捨てるミサゴ…

 マッキの心の中ではすでにミサゴの存在は霞み、ミサゴにとっても今の成長したマッキを「あのときの女の子」と理解することはできないでしょう…

 日が落ち、森が青く沈んでいきます。


 以降、近所に「小さい子供」がいなくなった三浦にミサゴの登場の場は無くなり…
彼女の「その後」は、最終回手前で語られることになります。



  第97話    目にしみる黄
 「パワーヒマワリ」なる植物の種をまいたところ、高さ5メートル以上に及ぶ巨大ヒマワリに育ち… という、『カフェアルファ』の夏の珍事のお話です。

 カフェに向かう道中からすでに確認できるほどの巨大さは、恐怖すら感じさせます。 夜間のライトアップで、恐怖度倍増。 



  第98話    飛ぶ者
 のばしていた髪をショートに切って、小網代の入江でブーメランの練習に励むマッキ。 ブーメランのカラーリングは、カマス(笑)

 そんな彼女の前に、しばらくぶりに帰省したアヤセカマスが現れます。

 前回、マッキに「カマス使い」としての才能を見たアヤセは、その道を勧めます。
 タカヒロも働きに出、マッキの中にも自分の将来への自覚が芽生え始めたようですね。

 その夜、マッキが新しく作ったブーメランには、この日会った仔カマスのカラーリングが…



  第99話    地表
 3巻・19話という、かなり早い時期に出会いながらも、その後交流の無かったアルファさんとアヤセが、カフェアルファで再会します。

 あれから80話(7年近く)経っていることを考えると、名前が出ないまでも顔を憶えていたアルファさんの記憶力は相当のものですね。

 ちなみにアヤセ曰く、『カフェアルファ』のある辺りは、昔ちょっと有名な不気味スポットだったとか。
 『カフェアルファ』のモデル地を推測する材料になるかも?です。


 不思議なことに、会話を聞くかぎり、アヤセがアルファさんと初瀬野先生の関係に気づいていないようです。 故郷や自分の身辺について語るほど、アヤセと初瀬野先生は親密ではないのでしょうか?
 共にミサゴを目撃している事から、両者とも、幼い頃を小網代近辺ですごした同郷者なのですが… 


 夕方になって帰ろうとするアヤセに、せっぱつまった表情で『こ、こんやは ここにとまってく ってのは… どうかなっ』と引き止めるアルファさん。
 (理由は単行本にてご確認を)

 女性型とはいえ、ここらへんはロボット… 発言が無防備すぎですね。(笑




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