この巻は特殊で、初めて長期的に三浦半島を離れることになった
アルファさんの1年をまるまる描いています。


夕凪時代の 神奈川県中部 〜 富士山 を、
アルファさんと共に見て歩きましょう。






  第66話    
 旅先の鎌倉付近で、台風後の工事による人出に恵まれ、食堂の短期アルバイトにありつくアルファさん。 『カフェアルファ』を全壊させた台風「メイホウ」は、各地にも甚大な爪痕を残したようです。

 この第8巻の特徴・付加価値の1つとして、今まで三浦近辺の風景のみを描写していた当作品が、実にさまざまな場所を夕凪時代の視点で描いてくれている点があります。
 今回の話だけでも鎌倉・七里ヶ浜・相模平野と、鎌倉〜片瀬一帯の約5キロを中心に、かなりの広範囲を描写しており、現地を知る者にとっては何ともくすぐったいような嬉しさがこみ上げてきます(笑)


 巨大植物となった、2キロ以上はありそうなを抱えて歩くアルファさん…
見た目にそぐわず、なかなかパワフルです(笑)

 宿が見つからずに「一晩中歩こうか…」と、ぼんやり考えてしまいますが、旅先だからこそペースを崩さない配慮が必要です。 宿が見つかって良かった良かった。



  第67話    
 地元と異なる地形の配置に、あっけなく迷うアルファさん。

 「たぶん… 歩く旅を どこか甘くみてたんだと思う」という一言は、歩く旅派の自分に、ちょっと優越感げな気持ちを湧かせてくれます。

 「ふっふっふ、そうやって失敗に直面しつつ数をこなせば、やがて醍醐味が見えてくるて、アルちゃん」て感じ(オヤジクセー)



  第68話    飛行機
 物語中で3番目のA7M3ナイ」に、旅先の空港で出会うアルファさん。

 「ロボット = 女性型」という図式を当然と思い込んでいたアルファさんは、ペースを崩されて固まってしまいます。 読者である僕らも…



  第69話    焚火
 夜の焚き火の光源の強さを表現するためか、人物の影を全て手描きのみで行っている珍しい回です。

 ナイから、「男のロボット」が希少であることを聞かされるアルファさん。
 それを抜きにしても、「男の構造を持つロボット」というだけで興味津々なのか、自然に視線が怪しい動きを… (笑)

 ほとんど感情を見せないナイですが、アルファさんには好感を持ったようです。
 マルコに送った情景メッセージからそれが感じられますが、それはまた後日の話…



  第70話    
 飛行機のそばに立つアルファさんを、ロボットのデジカメで撮影するナイ
 彼によると、アルファさんの持つデジカメは、普及品とは一線を画する上等の品だとか…

 そういう品を娘に贈れる初瀬野先生
 3体しかないA7M2の1体を所持する事や、水神さまの件でアヤセに便宜をほどこした事などを考えると、何らかの高い社会的地位を持つ事はやはり確実のようです。

 そして、初めて飛行機を体験するアルファさん。
 僕も3度ほど飛行機に乗った事がありますが、あの離陸時の「地面がナナメになっている風景」は、なかなか慣れることができません(笑)

 ナイの提案で飛行機の外部センサーに接続したアルファさんは、飛行機本体になってしまったかのような高い融合を体感します。
 あの日、太平洋に消えた水上艇と別れたときのような…

 A7M2だけが持つスペックの片鱗でしょうか…



  第71話    谷の道
 国道16号線ぞいで、水屋のアルバイトをするアルファさん。

 現在の相模原のあたりだと思うのですが、やや内陸になりつつある土地という事もあって、良い水は料金を取れるほどに貴重なのかもしれません。

 ここから富士山に向かった谷には、街路灯にしか見えない木が生えており、夜になると静かに光りだします。 その形状から、北の町の公園から見下ろすものとはまた違った、より生態的な代物のようです…



  第72話    ササゲ
 久しぶりに、話の舞台が三浦半島に戻ります。
ただし、話の主役はタカヒロマッキ
 タカヒロの運転するバイクで、きぬがさに買出しに出かける2人の1日です。

 マッキをバイクの後ろに乗せたタカヒロ、「お前(めー)よー、重ぇよ」と、一部地域限定のダジャレで文句を言います。

 用事を済ませ、海辺のコンクリに座って夕日を眺めつつ、ふとマッキを見つめるタカヒロ。 マッキという存在が、彼の中で少しずつ変化し始めているようですね。


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 2008年3月らくださんとおっしゃる方から、マッキはお赤飯の材料としてササゲを買いに行った可能性が高い、という追加情報をいただきました。

 ササゲ豆をネットで調べてみると、たしかにそういう使われ方をしていた時期が日本の歴史にもあったとのこと。 また、他のヨコハマサイトを見直してみると、その点に気がついている方もチラホラ。 己の無学を恥じるばかりです(笑)

(いいわけ(笑)をするなら、僕はこの『各話感想』を書くときに、先入観を持たないよう極力他人さまの感想を読まずに(あるいは頭の片隅に追いやって)執筆したのです。)

 ちなみに自分も、感想の中で「マッキという存在が、彼の中で少しずつ変化し始めている」とは書きましたが、マッキ自身の中でも、自分の体というものが変化していたのですね。 うむ〜、納得です。

 らくださん、ありがとうございました〜。

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  第73話    チョコレートケーキ
 西に大きな富士山を眺められる丘で、露店のバイトに励むアルファさん。
いつもは彼方に見ていた富士山が近くに見えることに、やや上機嫌です。

 「富士山の南側が通れない」らしいですが、これは水没ではなく、大噴火・大地震によって南の富士市付近が大規模に破壊されたからでしょう…

 夕暮れ… シルエットとなった富士を見つめているうちに、ふと、故郷から眺めていた頃の富士の姿が、アルファさんの脳裏をよぎります…

 何かを決意したように、グッと伸びをするアルファさん。
帰るべき時が来たようです。



  第74話    網膜
 扉絵から、マルコがほんのりエロス全快で突っ走ります。
ココネのくちびるを奪い(笑)、エロトークもさらさらと口をつきます。

 この回で、今までマルコに情景メッセージを送っていた友人が、ナイである事が判明します。 彼の送ってくる景色は「コントラストが強い」ものだとか。

 送信者本人が感じたままの情景がメッセージされているのだとしたら、ナイの感じている「世間」は、彼にとってやや刺激が強いツラいもの… という事なのかもしれません。

 また、ナイの情景の中にいるアルファさんが「風景より何倍もくっきりと」している点から、彼にとってそれだけ印象に残った女性であった… とも読み取れます。

 この時のマルコのショックを想像すれば、後日の、アルファさんに対する彼女のライバル意識について、やや同情させられる部分があります。



  第75話    野火
 三浦半島へと戻りつつあるアルファさんが日野の台地で目撃したのは、ムサシノの広大なススキ野原を焼く火事でした。

 地元では珍しいことでは無いようですが、地面から立ち上る煙が、大空に雲の山脈を作るさまは圧巻。 野焼きなら僕もたびたび見たことがありますが、もちろんはるかに可愛いレベルのものです。

 こうして生まれた灰が滋養となり、新たなススキ野原を育むのでしょう…



  第76話    
 じょじょに三浦半島に近づくアルファさん。
延々と続く林の中で、地元のおじさんから巨大な焼き栗をごちそうになります。

 この栗、20センチほどはある巨大な物のくせに、加熱中にちゃんとハジけ飛ぶことがある危険物。 実際この時も、おじさんが板でガードしていなければ、ちょっとした惨事になっていた可能性があります。

 この栗の破壊力についての考察は、こちらをどうぞ(笑)




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