長旅を終えて、再び故郷の地で時を過ごしはじめるアルファさん。

この頃から、漫画全体の雰囲気が、
今まで以上に静かで落ち着いた…
しかし、骨太なものに変化したように思えます。

はるべき伏線は大方はり、
1年間の三浦半島以外の場所の描写も達成した事で、

作者である芦奈野先生の中に
「もう、やる事はやっちゃったかな?」 という
寂しさにも似た安堵感が生まれたためではないでしょうか…


我ながら「何様?」という感のある
上から目線の評で申し訳ないです(笑)






  第77話    
 1年の長旅から帰ってきたアルファさんが、三浦半島入りし、その風土に故郷を感じます。

 丘につくられた『海の道』は、海面上昇から逃げるように、1本ごとにてっぺんへと近付いています。

 海辺のコンクリートにぶつかる大波。
 よく見ると、コンクリの隙間からもしぶきが上がっています。 単にそこまで亀裂が入っているだけなのか、すでにコンクリの下は侵食で空洞になっているのか…
 この岸も長くはないのかもしれません。



  第78話    むらさきの瞳
 1年ぶりに再会したタカヒロは、アルファさんの背を越えるまでに成長していました。 会話を交わす中で、照れつつも感覚が少しずつ1年前に戻っていく2人。

 身長の関係で自分を上目づかいで見るようになったアルファさんは、タカヒロにとって今まで以上に「お姉さん」とは異なる愛情の対象になりつつあるようです。



  第79話    土の夜
 タカヒロと分かれた後、自宅に直接帰らず、わざと夕方の富士山などを見つつ時間をつぶすアルファさん。 「1年ぶりの帰宅」というメインディッシュをいきなり口にするのには、やや躊躇があるようです。

 ようやく帰宅し、布団に入り、「1年ぶりにねむったような気がした」アルファさん。
やはり真の安眠は自分の巣でなければ、ですね。



  第80話    風見魚
 倒壊したカフェアルファに、せめて「風見魚」だけでも立てておこうと考えたアルファさん。 以前立てていた場所をデジカメで確認するというナイスアイディアをひらめきます。

 薄目で見つめると、かつて立っていた風見魚が今の風景に重なります。

今は無きカフェの姿も…



  第81話    一年空間
 カフェアルファに、愛用のトラクターで登場するおじさん
3コマも使い、力強いタッチとアングルで堂々の登場です。
(今回は後ろに重いスイカを引いてないので「スポキスポキ」ではないのですね。)

 懐かしい顔に感激したアルファさんから「手痛い」歓迎を受けますが。

 旅先の経験を語るアルファさんの口から出た、『本でわかることと 現地で感じることは… 別モノなんだなあって』という言葉に、おじさんはかつての風景を思い出したようです。

 旅から日常に戻って、1日のすぎるのが遅く感じるアルファさん。
 でもこういう時間は、密度が低い分、後で振り返るとアッという間だったように思い出されるものです。



  第82話    クロマツ通り
 『野比海岸』と思しき場所でアルファさんと待ち合わせをしているココネ

 2時間前にすでに待ち合わせ場所に来ている辺りに、よっぽど楽しみにしていたようです、ココネ。 1年以上ぶりという事もあるでしょうが…

 そこをたまたま通りがかった子海石先生の誘いで、診療所で待つことに…

 そして、アルファシリーズの歴史に深い興味を持つココネは、子海石先生から予想外の大情報を聞くことになります。

(ブレーキをかけた子海石先生の軽トラが、すぐに止まらずに ザー と砂利の上をすべっているのが、実に芸コマですね。)



  第83話    青い音
 子海石先生アルファシリーズに関して、その初期と、「A7」に入った直後からの関わりがあったそうです。

 彼女の語る内容は、ココネ曰く、『いままで私がためこんできた知識が軽くふきとぶ血の通ったエピソード』だとか…
 現場の人間だけが肌で感じてきた、「真実」の迫力なのでしょう。

 しかし、ブランク中に開発された「A5」「A6」などについては、関係者である子海石先生であっても情報が遮断されているようです。
 ターポンに搭乗しているA7M1についても「幻の〜」とココネが語っていることから、アルファシリーズの情報公開は「結果」のほんの一部に抑えられているのでしょう。

 ちなみに自分は、『アルファシリーズ』については このように 想像しています。



  第84話    海抜70
 アルファさんの案内で、『変に青く波のない水面』『自販機の小屋』『岩堂山』など、三浦市南部を見てまわるココネ

 タイトルの「海抜70」は、現在標高82メートルの岩堂山の、夕凪時代の標高といわれています。 つまり海面が12メートル上昇したわけですね。

 12メートル…
三浦半島の名所の半分以上が水没するのではないでしょうか?
 現地を知っていると背筋の凍る数字です。


 ちなみに、この回の終盤でココネが「私も西の岬に住みたいな」といった事をつぶやくのですが… 僕はこれを読んで、ココネに死亡フラグが立ったのかと思ってちょっとゾッとした記憶があります。
 これは、同じく三浦半島近辺を舞台とした漫画『鎌倉物語』の作者西岸良平さんの、『夕焼けの詩』(『3丁目の夕日』というタイトルで、アニメや映画にもなりましたね)を読んでいた影響からなのですが… この漫画の中で、「理想の場所」(夕日の美しい3丁目)にあこがれて「いつか住むのだ」と心に誓う人は、何らかの都合で不可能になるか、直後に死亡して2度と登場しなくなるケースがほとんどなのです。
 これは、3丁目を『理想郷』とする作者さんの執筆姿勢によるものなのでしょう…


 もちろんココネは、死なずに最終回を迎えましたが。
彼女の願いがかなったかどうかは、14巻でご自分の目でご確認ください。
 うちのページを読むようなマニアな方が未読だとは思えませんが… (笑



  第85話    かえる
 倒壊したカフェアルファに、ようやく屋根らしいものがつきました。

トタンげな簡素なものですが。

 トタン屋根に当たる雨音のやかましさなど、雨の強弱がしっとりと丁寧に描写された情緒的な話です。


 ちなみに、蚊取り線香に火をつけたアルファさんの、「煙がたった瞬間 五、六個の場面が パパッと走って」… という言葉の意味が分からなかったのですが…

 最近(2007年)になって、線香のかおりが「夏」の思い出をフラッシュバックさせたという意味かな? と、何となく気がつきました。



  第86話    おつかれのイエー
 表紙がさわやかにエロスですね。
こういうシンプルな服装は、素材の女性の良さがストレートに出るので大好きです。

 さて、まだまだ設営も中途段階の夏のカフェアルファは、お茶キュウリトマトで営業中。

 しかし、旅先の夏の三浦でこのような露店があったら、ちょっと入ってみたい。
発汗でダレた体に、冷たい「塩もみキュウリ」はきっとしみわたる事でしょう。

 そばには、愛らしい女性の姿まで…
住んでいいですか?ここに。(←死亡フラグ立った)

 缶ビールを開けて晩さんを楽しむアルファさんですが、おちょこ2杯で倒れていた下戸ぶりはどこへ?(5話)
 「ヨコハマ」らしくない、やや変なお話です(笑)



  第87話    入江の者たち
 『小網代の入江』に座り込むアヤセ
水面に魚影が見えているのに、カマスはリュックから出ようともしません。
 気分がノらないと、アヤセの言うことをきかないこともあるようです。

 入江に泳ぎにきたマッキと知り合ったアヤセは、ミサゴについて情報交換。

 異常に高い身体能力から『正体はロボットに決まっている』と読み手が思いがちなミサゴですが… アヤセの発言が、それをアッサリと否定しています。
 ミサゴは、ロボットが登場する何10年か前からすでにいたそうです。


 今までの見てきた「異形」から推測すると、その正体はではないか?というのが、アヤセのミサゴに関する解釈のようですが…



  第88話    ミナミトビカマス
 マッキの中に、「カマス使い」の素質を見出すアヤセ
ミサゴ(とカマスをキッカケとして、また、新たな交流が生まれました。

 しかし、結局魚をとらなかったカマス。
今日のアヤセは、野宿の上、夕食は「カリントとお茶」…

 昇る満月を、1人と1羽がながめます。




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